Tears Taste


「あぁ…。」


情けないことに、そんな言葉とも息とも言えないような音が出た。

こんな感覚は初めてだった。
身体から力が抜けて、コートに倒れそうになるのをなんとか抑え付ける。

まだだ。
まだ倒れるのは早い。


「両校、整列!礼!!」


「「ありがとうございました!!」」


高校3年間の全てが、終わった。




誰かさんと違って高校になるまで負けたことがないなんてことはない。

てかキセキの世代が無敗だったんだから、どこかしらで全員負けてるんだ。

中学ん時だってそりゃ、本気で取り組んでたつもりだ。
負けたら悔しいし、チームのヤツらと泣いたりもした。

けど、ここまでの脱力感は味わったことがない。

どんなに泣いても翌日には立ち直っていた。
コートで倒れそうになる、なんてこともなかった。
礼するのすらこんなに苦しくて辛いものだなんて知らなかった。

「宮地、」

「大坪…。」

「ありがとう。」

止めろよ。

「…ろよ、んな、最後みてぇな言い方…。」

わかってる。
俺たちは最後だったんだ。

こうやって大坪と、木村と。
高尾と緑間と…チームのヤツら全員とバスケやるのは。

どんなに願ったって、望んだって。
もう2度とできねぇんだ。
そんなのわかってる。

「宮地サン…。」

さっきまで試合をやっていたコートからは早くも歓声が聞こえる。
誠凛vs海常だ。
こっちもかなりの好カード。そりゃ歓声もあがる。

「全国ベスト4なんだ。
胸を張っていいだろ?」

「……ベスト4なんかじゃ足りねぇんだよ…。」

そんなことはわかってる。
インハイにもウインターカップにも出れない学校なんてざらにある。

その中で、全国まで行って上から数えるほうが早いんだ。
そいつらからしたら充分すぎるだろう。

けど…。

「嫌なんだよ。これで最後とか…!
最後まで行けないで途中で終わったのに、もうお前らともう公式でプレイできないとかよ…!」

涙のせいで、うまく言葉が出ない。

今度こそ完璧に力が抜けた。
壁伝いにズルズルと床に座り込む。

「宮地…。」

気を使って、だろう。
監督も、ベンチのメンバーもいない。

いるのはスタメンで最初から最後まで一緒に走ってた5人だけ。

「すみませんでした。」

「緑間…。」

「俺にもっと力があれば、赤司を止められてたら先輩たちを引退させるなんてことはありませんでした。
散々我侭を言ってやりたい放題やってきたのに、決勝リーグでもウインターカップでも負けて…。」

「ちげぇだろ!?
赤司を止められなかったのは俺もだ!
1年なのに生意気なことばっか言ってたのに、全然力なくてすみませんでした!!」

頭を下げたままの緑間の隣で勢いよく頭を下げた高尾。
2人の表情はわからない。
ただ、2人の足元にはポタポタと雫が落ちてる。

「…別に誰もお前らのせいだとは言ってない。俺も宮地も木村も。
きっとチームのヤツら全員がお前らは良くやったと思ってるはずだ。」

「大坪さん…!」

「…力がなかったのは、どっちかっつーと俺の方だ。
謝んねぇといけねぇのは俺の方だ。…悪かった。」

「宮地サンは…!「アホ。お前も謝る必要はない。」…大坪サン…。」

全員の目が大坪に集まる。

「誰か1人の力不足とかじゃない。
俺らもベンチも客席も…全員が本気でやって、負けたんだ。
いいか?自分で自分を責めるな。俺はこのメンバーは胸を張れる最高のメンバーだと思ってる。」

「大坪、泣いてる。」

「お前も顔ぐしゃぐしゃだぞ?」

「うっせーよ。
木村だってぐしゃぐしゃじゃねーか!
つか、高尾も緑間もすんげぇ顔してるし…。」

ははっ。

そんな感じの乾いた笑い声をあげた。

「俺さー、このメンバーでバスケできてよかったわ。
優勝とかはできなかったけどさ……初めてスタメンでやれたのがよ、この、メンツで…良かったって、…思えるわ。」

あぁ、また視界が霞む。
泣くの見られんの、好きじゃねーんだけどなー…。

けど、全員泣いてるし、変わんねぇかな…。

「…俺も、初めてのスタメンがこのメンバーで良かったって思ってる。
心残りが全くねぇわけじゃねぇけど。でも、この先もお前らがいるからな。」

「え…?」

「木村サン…。」

「そうだな。木村の言うとおりだ。」




大丈夫。
思ってることは一緒だ。




「「「任せたぞ、1年レギュラー。」」」

今なら言える。

最初はいがみ合ったり気に入らなかったり、ムカついたりしたけど。


でも、このメンバーが大好きだ。



end


本誌秀徳がヤバいです。
秀徳は永遠不滅!!

とりあえず、試合終了後にベンチが描かれることを期待してます。



2012/088/31.


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