鳥の鳴き声が響いて草木が風に揺れる。
雲が晴れて日差しの温かみが地面をくすぐる朝早く、私はレスターヴァ城の庭へ足を踏み入れた。昨日は天気が悪かったのに、今日はすっきり晴れ晴れしていてとても気持ちいい。少し早く目覚めてしまったからたまには外を歩こうと庭に出てきたわけだけれども、こういうのもたまーには結構いいものかもしれない。


「はぁー…気持ちいい!」

「それはよかったな」

「!?」



ぐっと伸びをしたとき、突然の背後からの声に思わず飛び上がってしまった。誰だよう…驚かせたんだからなんか文句のひとつくらい…と思って後ろを見ると、そこにはいつもと変わらない黒い服に身を包んだ、チェスの兵隊作戦参謀様のペタが立っていた。



「ペ、ペタ…驚かせないでよ…」

「私に気づいていなかったのか。それは悪かったな。」



相手がペタだとわかって文句をいう気もうせてしまった。ため息をひとつだけついてペタのとなりに移動する。


「こんな朝早くにどうしたの?」

「それはこっちの台詞だ。ニコラがこんな時間に庭をふらついているなんて今日は何が起こるのやら」

「しっ、失礼なっ!!」

「事実だろう」

「普段はそうだけど…」



ペタが歩き出したのにつれて隣を歩き出す。からかうようなペタの言葉にしっかりとリアクションをとりながら返事をした。まだまだ早い時間だからか少し歩いても人は誰もいなくて風の音だけがする。


「それはそうと、ペタこそどうしてこんな所にいるの」

「貴様と違って私は毎朝この時間には起きているのでな。」

「えっ、毎日?」

「そうだ」

「夜も遅く起きてるのに…いつ寝てるのさ…」


するとペタはムッとしたように私を一睨みする。うひー…こわっ。少し肩をすくめながらいまの言葉は無かったことにして空に視線を移した。



「いい天気だね」

「そうだな」

「今日もなんか任務的なのあるのかなぁ。こんないい天気の日はゆっくりお昼寝したいよ」

「ニコラらしい愚鈍な考えだな」

「失礼!!」



たわいのない会話。
ペタはチェスの兵隊の作戦参謀で、ファントムの右腕で。私のようなビショップ兵には届かないまるで雲の上のような存在。なのに、こうやって朝の何でもないような時間を何でもないような普通の会話をしながら過ごしている。なんだか…そう考えるととても変な感じ、だ。



「それじゃあ私は先に戻る。ニコラもだらだらしている暇があれば修練の門にでも入る努力を見せろ」

「…はぁ、朝から手厳しい一言をありがとうございますよ…」

「手厳しいとはなんだ、お前もナイトクラスに少しでも近づいてチェスの兵隊に貢献しろ。もう少し強くなって貰わんとな」

「はいはい!お説教はたくさん!今から行きますよ……せっかく早く起きたのに修練の門に入るなんて、もう」



厳しい言葉を痛々しい目つきで言われて逆らえるはずもなく重い腰をあげる。するとペタはふん、と鼻で少し笑えば袖から修練の門のARMを投げ渡してくる。げっ、これかんなーりきついやつじゃない…鬼…



「どうも、こんなお辛いの下さって…」

「不満か?」

「いやぁ、大満足です!!!」


次のレベルのを出そうとにやっと笑ったのをみてとっさに叫ぶとまた軽く鼻で笑われた。もう好きにするがいいさ…



「鍛錬に励め。貴様の素直に行動するところ、嫌いではないからな」

「え?」



いきなりの少し褒めてくれてるような言葉にかたまる。え?あのペタが?私に?これは少しでも持ち上げておいて落とすとか、調子づかせておいて鍛錬させやすくする作戦…なのだろうか?
でもペタは特に変わった様子もなく真面目なようで。



「ほら、何してる。さっさといけ」


「あ、はい!」



ぼーっとした私に今度はいつも通りの冷ややかな声でぴしゃりと言いはなった彼にさっきの台詞は幻なんだと思わざる終えない。返事をしてそのまま早歩きでその場を去る。時計台を見ればまだ朝ご飯まで時間があった。

早起き、もそう、悪くはない、かも。











早朝散歩

(これから毎日早起きしようかな。なんて、そんなの無理に決まってるけど。)











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