「…っつ……ぅ、」
私は余りの足の激痛に思わず顔を歪めてしまった。今、私の足からはたくさんの血が滴り落ち、歩いてきた道に赤い水溜まりを作っている。仕方なく木に手を突いて腰を下ろすが痛みになんら変わりはない。
「……馬鹿なことしちゃったなぁ…」
ははっ、と自分に苦笑した。
さっき、命令通りに暴れてきたのはいいが油断してMARの連中の攻撃にかすって怪我をおってしまった。命令のARMはとって逃げてきたから仕事の結果に支障はないけど、怪我してうまく歩けないなんて…とんだ恥ね…
「アンダータ持ってくるんだったな…ちゃんとペタの言うこと聞いとけば良かった…」
「だから言っただろう、その通りだ」
「…!?」
「こんな傷をおって…情けない奴だ」
いきなり上からふってきた声に思わず身震いして驚いた。なんなの、いったい…、そう思えば見透かされたようにくっ、と声の主は口を不機嫌そうにまげた。彼はというと、今私が名前を呟いたばかりの彼、ペタで。
「な、なんでこんな所に…」
「貴様はアンダータを持って行かなかったからな、召集の連絡も意味がないと思い、私が来てやったということだ。全く、貴様は迷惑ばかりかける……」
「…悪かったわね、」
「ふん、まぁそうグレるな。迎えに来てやっただけでも感謝しろ。」
いつもの冷たい声でなんか言われたって私もいらいらするだけだっての!なんて思いながらも動けない足を見て、逆らうのは止めにした。私が大人しくすることがわかったペタは大きなため息をついた。ちぇ…なんだい!
「帰るぞ、」
「うん。っつ…ってて…」
少し遠くでそういうペタに返事して木に捕まりながらたつが、痛みはますばかりで。思わず痛みに拳を握りしめてしまった。
「……はは、トロくてごめんね」
「………」
「せっかく迎えにきてくれたのに…怪我人なんて迷惑よね、」
そう言った途端になんだか自分でも情けなくなってきて、キュッと唇を噛み締めた。それでもこれ以上ペタに嫌な顔されたくなくて笑いながら足を引きずってペタの近くにいく私。うざいだろうな、ごめん。
「まぁ、迎えにきてくれて助かったよ!さ、帰らせて下さい参謀さま。」
「…そんな足で強がって…本当に貴様は馬鹿な奴だ」
キッ、と睨まれて私は少し肩をすくめた。やっぱり怒ってるのか機嫌が悪い。相当ご立腹のようだ。そんなペタを気まずく思えば少しだけ近くに行く。すると彼はいきなり私の手を引っ張ってきた。
「な、なに…!」
「……次、怪我などしたら私が許さんからな……肝に命じておくがいい…」
「へ……?」
「帰るぞ」
彼はそっぽ向いたままそう言った。アンダータを指にはめかえて私のほうに振り返る。今の言葉は……何?なんだか一瞬にもドキッと高鳴った心臓に違和感を感じながら私はアンダータの効果範囲内に足を進めた。
そして──城に帰る、それは一瞬のことだけど私の右手に触れたみょうに冷たい何かに私は違和感と疑問を覚えざるおえなかった。
触れた何かは私の指だと、
(それに気づくまでコイツは何時までかかるのだろう)