「わ、あ…」
たくさんの生徒たちが忙しそうに行き来しているプラットホーム。ローブをきていないのはおそらく新入生だろうか、自分と同じくらいの年の子達がそれぞれ親との別れを告げながら荷物をいじり、列車に乗り込んでいるようだった。人混みがすごいけどそれもなんだか魅力的に思えるくらいにこの場所はきらきらしているように私には感じられる。
「懐かしいなぁ」
「そうね、学生だったときのこと思い出すわ」
汽笛が鳴り響いて煙をあげているホグワーツ特急をみながらパパとママが微笑んだ。私も今からこれで、学校に。
先程まであった不安はスッと消えて変わりに新しいことを始めるときのワクワク感が私の体を駆け抜けていく。もう大丈夫。
「じゃあ荷物を預けてくる。二人はここで待っていて」
「ありがとうパパ」
パパが私の荷物が山積みにされているカートをひいてこみあってる人混みの中に消えていく。アレスタやドラコ、それにロン達もこの中にいるのかな。そう思って周りを見渡してもあまりの人の多さに見つけるのは諦めるしかないようで。コンパートメントを探すときにでも見つけよう。
「手荷物に着替えがあるから制服には汽車の中で着替えてね。きっとアレスタちゃんやドラコくんとかもいるでしょうし、モリーのとこの兄弟にもきっと会えるから大丈夫よ」
「ふふ、ありがとうママ」
「……まだ不安?」
「…ちょっとね、でもなんだかここへ来てからは不安はなくなった気がするの。早く学校に行きたい、そんな気分」
私の答えをきくとママは笑いながら安心した、と一言。
そんな会話をしていれば荷物を預け終わったパパも帰ってきた。時計をみるとまだ時間はあるけれど汽車のなかには全然入れる時間。
「ちょっと早いけどそろそろ行った方がいいわ」
「そうだな、大丈夫か?ミリア」
「平気よ!」
「いい返事だ!…じゃあしばらくお別れだな」
頭をくしゃっと撫でられればぎゅうっとパパに抱きしめられる。その横からママも肩を抱く。確かに寂しい、けど頑張ろう。ここで新しい生活をはじめるんだもん。両親の育った学校で魔法を勉強できるなんて幸せ。
「じゃあいくね、」
「体に気をつけるのよ」
「いってらっしゃい!」
「行ってきます!!」
二人の頬に軽くキスをして別れを告げれば私は一呼吸おいて大きく手を振った。
────────────
(あ、空いてる)
少しはやめに入ったせいかまだコンパートメントは空いていた。四人掛けの個室のようになっている所に一人ではいるなんてちょっと無神経かも…なんて思ったけどもし誰かきたらどうぞって言えばいいんだし、って結局その空室のコンパートメントのドアを開けた。
荷物をおいて席に座る。
ドアを閉めればだいぶ静かになったようでしん、と外界から離されたような雰囲気がした。時計をみると汽車がでるまであと30分はある。…どうしよう。
「誰かに見つけてもらえればそれが一番いいんだけど…」
そううまくはいかないかな。ちらちらと席を探すひとの視線がくると一人ガラス越しに気まずい思いをする。窓のほうには忙しそうに行き来する人々がいて、それを眺める。左から右へ。右から左へ。目で追い続ける、と…なんだか眠くなってきた。と、そう感じた瞬間あくびがでる。そうだ、思いついた。昨日もろくに寝れてないわけだから汽車が出発するまで寝てればいいんだ!我ながら名案。
「少しだけ目を閉じて休んでよう」
荷物の中にあった上着を上半身にかけて壁によっかかり少し体を丸めた。意外と寝心地悪くはない。疲れてればどこでも寝れるってことね、うん。
(「一眠り、」)
思ったよりも早く周りの雑踏は消えて真っ暗な世界が訪れた。