人混みと雑踏、笑い声とともに賑わった様子の道並に大きなショーケースからみえる商品と店内。それから自分と同じくらいの背格好をしたたくさんの子供たち。

そう、私はダイアゴン横町に来ているのです!!

ママに言われたとおりさっそくホグワーツ入学の準備の為にダイアゴン横町に訪れたのだけれど、何しろ人でごった返しているし私は買うものリストをみてもそれをどこで買うのかいまいちわからない。



「ママ、どうするの?」

「んーとりあえず教科書は重いから最後にしましょう。じゃあね…やっぱり、魔女になるために一番大切なもの…杖を選びにいこうかな」

「杖!!」


ママがリストを眺めながらそういうのを聞いて思わず大きな声を出してしまった。だってずっと憧れていたし自分に見合う杖を選ぶのは楽しみだったから。そのまま私の手を引きながら色々呟くママについて行くといつのまにか杖屋さんに着いていた。オリバンダーの店という看板。

「さぁ、はいるのよ」

「うん」



言われてはいると店内には誰もおらず、箱とよくわからないものでちらかった店内の奥から一人老人がひょっこり姿を現した。きっと彼がオリバンダーさんだろう。私たち二人の顔を見るといらっしゃい、と一言口を開いた。



「オリバンダーさん、お久しぶりです」

「おお、あなたは…クレア、クレア・エルドレッド…クルミの31cm、ドラゴンの心臓の琴線…でしたかな」

「えっ?」

「さすがですね、本当に。よく覚えていらっしゃるわ。今はエルドレッドじゃなくてクラシアスですけどね」



思わず驚いて声を出した瞬間オリバンダーさんはこっちを向いてまたやわらかく笑う。ママの杖の素材、長さを覚えてるんだ、とてもじゃないけど信じられない。



「今日はホグワーツ入学が決まった娘の杖を選びに来たんです」

「ほう、そうでしたか。どれどれ…」



私のことをじーっと見つめた後奥の方に消えていくオリバンダーさん。杖を沢山の箱がならぶ棚から梯子を動かしながら選んで一つ取り出す。悩みながら箱を一つ持ってきたようで、それを私の前であけると杖を差し出した。



「モモと不死鳥の尾羽、23cm。柔らかく多様性あり。ふってみなされ」

「え…あ、はい…」



とりあえず言われた通りにするしかない私。
何がおこるのかよくわからないけど杖を軽くふってみた。



ガシャーーーーン!!

「!!?」



ふった瞬間に机の端にあった写真たてがすごい音で砕け散った。え、これ私悪くないよね??そんなこと思いながらママとオリバンダーさんをみると特に怒っていないようで。



「コレはだめでしたかな、じゃあ次は…」


「あ、す、すみません…」



またオリバンダーさんは奥に引っ込むと新しい杖の箱を持ってきた。中をみるとさっきの杖よりも少し長く、手元の装飾も美しい真っ直ぐな杖が出てきた。



「アカシアにユニコーンのたてがみ、28cm。しなやかで優美。」



また杖を持ってみる、と、さっきの杖とは違う感覚。まるで前から感触を知っていたような変な懐かしさ。そのまま杖を掲げる。
と、ふるまえにぱっと杖の先端が光を灯し、穏やかな風を吹き起こした。



「…決まりのようですな、」

「じゃあこれが…」

「そうです、あなたの杖です。今この杖はあなたを選んだ」

「杖が私を…」



またオリバンダーさんは柔らかく笑った。手元の杖はまるで生きているように感じられて、オリバンダーさんのいった杖に意志があるような言葉は少し本当と信じられる。そして…なんといっても初めて自分が手に入れた杖。杖が私を選んだだなんて魔女への第一歩を踏み出した気がして誇らしくて胸がきゅんとなる。

私とママは会計を済ませてオリバンダーさんにお礼をいってから店を出た。ポケットにはさっき買った杖。はやく魔法を覚えて使ってみたい!…なんちゃって。



「ミリア?」
 


後ろから私の名前を呼ぶ声。
思わず振り向くとそこには見覚えのある金髪、ブロンドヘアをオールバックにした青目の少年が立っていた。



「ドラコ!久しぶりじゃない!」



私は彼にかけよった。
彼はドラコ・マルフォイ。何を隠そう私の幼なじみだ。ママの学生時代の先輩だったルシウスおじ様の息子。親同士のつながりってやつで昔からよく会ったり遊んだりしていたのだけど。前にあったのは何しろ半年以上前だったものでそれなりに久しぶりだった。



「確かに久しぶり、だな」

「本当に!元気してた?」

「それなりにな、ミリアこそ相変わらずバカ騒ぎして怪我でもしてたんじゃないのか?」

「むっ!!失礼な!」


「あら、どうしたの?」



久しぶりの幼なじみの会話はなかなかくだけた感じだけど相変わらず元気そうで何よりね。すると私たちに気づいたのかママが声をかけてきた。



「あら!ドラコ君じゃない!お久しぶりねえ!」

「おば様…!お久しぶりです」


ドラコは私と喋るときとはまったく違う猫をかぶったような態度で会釈。なーによ。かわいこぶっちゃって!



「ルシ…えっと、お父さんは来てるの?」

「はい。父上は先ほどお会いになった知り合いの方と話があるみたいで」

「じゃあドラコ1人なの?」

「すぐ終わるって言ってたから僕もそろそろ戻るけどな、」



そうなの…なんて返事をすればドラコはお得意の身分を鼻にかけたような高飛車な笑顔でああ、なんて返事をしてきた。本当に小生意気っていうか、なんていうか。



「じゃあすみません、僕はこれで失礼します」

「あ、そうなの。足止めしちゃってごめんなさいね、お父さんによろしく伝えて」

「はい!」



ドラコはママにスッと再び会釈して私の方に向き直った。ドラコもきっと、ホグワーツ入学が決まって買い物に来たんだろうからもう少し一緒にいたかったのもあるけど仕方ない、またフクロウ便を送っても良いし何よりこれから同じ学校の同級生になるわけだし。たぶん。



「じゃあまたな、ホグワーツ、くるんだろ?」

「うん、ドラコもでしょ?」

「勿論さ。…じゃあ次は学校でか」

「そうね!」

「じゃあ、ホグワーツで」



背中を向けたドラコに雑踏の中で手を振る。なんだかホグワーツ入学への楽しみが一つ増えたって感じ!
私はママの手を握って歩き出しはじめた。
まだまだ買う物リストのチェックマーク一つしかないわけだから。


その時私の隣を男の子と付き添いの大男がすれ違っていった。












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