ガタン、と汽車が止まった。
ざわざわと音がして生徒たちが汽車を降りだした。知り合いにも結局会えないし、眠りこけてたせいで友達もつくれなかったばかな私はしかたなく一人で汽車を降りる。そこは生徒たちでごった返していて。人の海にため息をついたそのとき、
「ミリア!!」
後ろから名前を呼ばれた。その声に振り向くとそこには見慣れた茶髪のショートヘア
「アレスタ!!」
幼なじみとも言える友人のアレスタがたっていた。
「ミリア、おまえ一人なのか?珍しいな、すぐ友達つくれるくせに」
「えへ、汽車でる前からずっとうたた寝しちゃってさ…」
私の回答に軽く笑えばそういうところも私らしいと肩をかるくたたく。相変わらずさばさばしていてそれでも元気な彼女に少し安心した。やっぱり誰か知り合いと一緒にいるのは心強い。
「アレスタは誰かと一緒じゃなかったの?」
「コンパートメントの席が一緒だった子たちとさっきまで一緒だったんだが、ミリアを見かけたから別れてきたんだよ!一人だったしな」
「アレスタ…!えらい…!」
「もっとほめてもいいぞ!」
そんな会話をしていたとき先頭のほうに明かりをもった大男の姿が見えた。明かりを上にかざしながら大声で呼びかける。
「イッチねんせいはこっち!!イッチねんせいはこっちについてこい!!」
その言葉に顔を見合わせる私たち。
「いこうか?」
「そうだな!」
そして、駅を抜けると目の前に飛び込んできたのは…
大きな城。明かりがついているその巨大な城は森の前にそびえていてとても学校とは思えない。それにひきつけられるように足をさらに進めた。
いよいよ、だ
城の中は私の想像を遙かに超えていた。大きな石の階段、すばらしい装飾。動く絵画達。まるで美術館にいるようなそんな感じ。新入生はゾロゾロと前の生徒に続いてキョロキョロしながらも廊下を進んでいった。
「すごいね…アレスタ、」
「本当だな、これからここで過ごすのかと思うと…」
「早く寮の中も見てみたい!きっとすごいんだろうなぁ」
「確かに!でもその前に寮がどこになるかだな」
「うん。どんな人と一緒になるのかな…アレスタと一緒かな?」
「はは!確かに一緒だったらそれも楽しい学生生活になりそうだな!」
そんなことをしゃべりながら進んでいると隣の生徒のグループの会話が耳に留まった。何かの噂話をしているみたいな雰囲気だけど。軽く耳をすませているのにアレスタが気づいたのか口を開いた。
「例の男の子の噂だよ、ミリア」
「例の…?それがどうしたの?」
「しらないのか?私達と同期なんだよ、彼は。ホグワーツ入学が決まったらしくてさ。だからこの中にいると思うんだ、多分。だからだよ、皆気になって仕方ないのさ」
「ふーん、そうなの」
あの例のあの人に唯一勝った男の子。全然興味ないっていったら嘘になるけどそこまで噂したらその子可愛そうじゃない。まぁどんな顔してるか見てみたいけどね、ごっつくて背も高くて…とかなのかな?まさかね。
そんなことを話していればピタリと列がとまった。階段下あたりにいる私達が上を見上げると先頭のところに緑のローブの先生が立っていた。厳しいような柔らかいような口調でこれからの説明をする。大広間に入り、組分けの儀式をやるという。やっと待ちに待った組分けが始まるのね…!!
大きな広間。拍手とたくさんの先輩達。
雰囲気に圧倒されながらもそんな私の心とはうらはらにすぐ組分けが始まった。
「ドラコ・マルフォイ!」
「あっ」
ドラコの名前が呼ばれた。席に進んでいくドラコ。どこの寮にはいるかなんて、そんなの聞かなくたってわかってるけど。そして帽子も私と同じ考えだだったのか頭にかぶりかけた瞬間に声をあげた。
「スリザリン!!」
ドラコは当たり前とでもいうように高飛車に笑うとスリザリンのテーブルに進んだ。
「まぁそうなるよな、やっぱり思ったと「アレスタ・マークウェル!」おっと、」
じゃあ!と軽くてをふり、アレスタも呼ばれて前にでた。帽子をかぶって座る彼女。帽子は少し悩んだようにアレスタに声をかけていたが決まったようで大きな声でいった。
「レイブンクロー!!」
アレスタは自分でも驚いたような顔をしたが先輩達の拍手に顔をほころばせてテーブルに向かう。ちらりと目があうと頑張れというようにウィンクをしてきた。帽子はどんどん組分けを進めていく。そして、
「ミリア・クラシアス!」
ついに名前が呼ばれた。すごく心臓がばくばくいってる。足を進めて椅子に浅く腰掛けると頭に帽子の感覚がつたわってきた。
「うーん…君は真っ直ぐで素直…勇気も持ち合わせている、母親に似たのかね、グリフィンドールに入るのがいいと思うが……」
帽子はそこで言葉をとめる。何?グリフィンドールになるの?違うの…??ちらりとドラコとアレスタを探すけど落ち着いてないからか全然みつからない。気がそれたのがわかったのかまた帽子はしゃべりだす。
「君の才能の奥底には違う強さを感じる…この寮で自分らしい道を見つけるといい…
スリザリン!!」
「えっ!!?」
拍手の音、帽子が頭からはずされた。まさか想像もしてなかった。パパとママはハッフルパフとグリフィンドール。それに親類にもスリザリン出の人はいないし…どういうこと?別に嫌なわけじゃないけど不思議で仕方ない。
スリザリンのテーブルに近づくとドラコが手招きしてくれた。それをみてドラコの隣に腰掛けた。
「まさかミリアもスリザリンになるなんてな」
「今まさにびっくりしてるとこよ…」
「僕はスリザリン以外考えられないし他なんて嫌いだが、伯父様と伯母様はグリフィンドールとハッフルパフだったからな。おまえはどっちかにいくだろうと思ってた」
はっきりいうなぁ…まぁこれから私もスリザリンで過ごしていく事になるんだからもう関係のない話なんだろうけど。
パパとママにはなんて言えばいいのかな?もう私の緊張はなくなっていた。
「ハリー・ポッター!」
聞き覚えのある名前。多分ここにいる全員がしっているであろう名前。ドラコもぴくりと反応して前を見た。大広間が一気に静まりかえる。そして、椅子に腰掛けようとするメガネの男の子を私はじっとみつめた。