体の気だるい感じにぼーっとする頭。重たい瞼を開けるとそこは入ってきた時と変わらないコンパートメントのソファ。それに自分の荷物。ふと外に目をやると流れていく景色にガタガタという汽車のタイヤ音…
「えっ」
ようやく目が覚めた、のはいいんだけどもう汽車は出発してしまっていた。相変わらず一人のところをみると誰にもみつけてもらえなかったのか、はたまた爆睡してたせいで誰もはいってこれなかったのか…
昨日全然眠れなかったせいもあって本当に夢すらみないほどの深い眠りに落ちてしまったようだった。時計を見るともう汽車がでてからかなりの時間がたっている。
「うわあ…さっそくちょっとやらかしてしまった感…」
仕方ない、もういまさら人探しに行くのも変だしもうやめておこう。それにやることもないしちょっとはやいけど制服に着替えちゃうか。
そう思って着替えをもって外にでる。一番近いトイレのほうへ廊下を歩いていく。ちらりとほかのコンパートメントをみるけど知り合いの姿はなさそうだった。
トイレにはいって制服に着替える。けど、まだどこの寮かわからないから黒と灰色につつまれた制服。早く寮色のネクタイしたいなぁ、なんて。色だけで決めるならグリフィンドールかレイブンクローね。色合い可愛い。全く逆の色だけど。
鏡で髪の毛も整えたのを確認してトイレからでる。その時ドアのかげになってたところに人がいたのを気づかなかった。
「きゃっ」
「うあっ」
ドンっと音がして軽く人にぶつかる。転ぶレベルでぶつからなくてよかった。
「ごめんなさい!私よく確認してなくて」
「いいえ、こちらこそごめんなさい」
目の前で謝ってきたその子は茶髪におおきくウェーブがかかった髪の毛にきりっとした顔立ちの女の子だった。同じ新入生だろうな。
「あなた新入生ね?聞きたいことがあるんだけど、この辺でヒキガエルをみなかった?」
「えっ、みてないわ」
「そう…ネビルって子のカエルが逃げたの。もしも見つけたら声かけてくれない?」
いきなりの質問だったけどべつに邪険にすることもないしにこりと笑ってわかった、と返事を返した。ペットがいなくなるなんて大変だなぁ。そのまま彼女と別れてコンパートメントにもどる。すると私のコンパートメントのドアの前に茶色い固まりが見えた。
「なにあれ?」
近づくとその固まりはぴくりと動く。
「ひっ」
よく見るとそれはカエル…だった。あきらかにさっきの子がいってたヒキガエルだ。ちょっとカエルは苦手だから触りたくないんだけど…この場合仕方ないよね…
そーっと後ろから近づき思い切ってがっ!と目の前のカエルを掴む。少し暴れたけど逃げ出すレベルではなくて。ぬるぬるした感触に思わず声をだしてしまうけど早くどうにかしなきゃ…
「あ、の…」
さっきの子が行った方向に歩きながらキョロキョロ周りをみる。そのとき目の前から黒髪の男の子が歩いてきた。目が合う、と
「トレバー!!」
「ええっ!?」
ダーッと走って私に近づいてくる。え、だ、誰??さっきの子がいってたなんちゃらくん??
そんなこと思ってるとその子は困り顔から安心したような表情をして私からカエルを受け取った。
「あの、その、トレバーをみつけてくれてありがとう…!ずっと探してて、大変だったんだ」
「そうだったの…さっきトイレの前で茶髪の女の子にその、トレバー?の話をきいたから」
「そうだ、ハーマイオニーにもつたえなきゃ!ほんとうにありがとうね…僕はネビル・ロングボトム。君は…?」
「私はミリア・クラシアス」
ちょっと気の弱そうな彼に名乗ればよろしく!と微笑まれる。明るく返事をかえせばにこりとまた笑ってくれた。
「じゃあ僕はここで…ありがとね」
「いいえ!同じ新入生だからきっとまた会えるね!また!」
一通り挨拶をすませてその場で別れる。また知り合いができた…!彼や、さっきあった女の子とも仲良くなれるかな、また会えるだろうか。
そんなことを思いながらコンパートメントにもどろうとする、けど、もう一回トイレによって手を洗わなきゃね…
私はもときた廊下を戻る。
ちらりと外をみるともう暗くなりかけていて、学校につくのはもうすぐだとなんとなく直感できるようだった。