今日は朝から雨だった。

別に水なんて魔法でいくらでも防水できるわけで不便するわけではないが、僕は雨の日が嫌いだ。もういい歳だというのに、情けない…。分厚い雲が空を覆って太陽光を遮るその様は、かつての僕の罪の時代を思い出させる。
もう、何年も昔のことになる。
平和ボケしたようなこの毎日の中で、それでも忘れることは許されないのだと…。まるで説教でも受けている気分だ、と吐き捨てようとしたこと。僕は結果的に何もしていないのだ、と自己防衛に走ろうとしたこと。どれも僕を救ってはくれなかった。結局なにもかもが現実逃避だと嫌気がさしてくるばかり。

はあ、とひとつ溜息を吐いて、窓の外を眺める。今日は、出来るだけ早く終わらせようと思った。そして、真っ直ぐ帰ろう、と。

ちなみに僕は今、妻であるミリアの故郷、日本で、マグルの普通会社でサラリーマンというものをやっている。どうしてこうなったか、なんてむしろ僕がききたい。時の流れとその場の勢いとはなんと恐ろしいものか。決して今が不幸ではないけれど、かつての僕が今の僕を見て何と詰るだろうか…苦笑いすらできない。

オフィスの皆々様にお先に、と告げてビルを出る。ああそういえば、流石にここでおおっぴらに魔法を使うわけにはいかなかったのだと思い出し。片手の傘への魔法は簡素なものへと留めておいた。

ああ、気が沈む。早く帰ろう。
そう思い、傘を開きかけた時だった。



「ドラコ!お疲れ様、帰るの?」



視線を声の方に向けると、袋をいくつか下げた女性──ミリアがこちらに手を振っていた。聞けば、買い物で近くまで来たのだとか。数時間ぶりの笑顔は、太陽のようだと思った。思わずその頭を撫でてから上を見ると、雨は先ほどよりもだいぶ小雨になったようだった。

くすりとひとつ笑いをこぼし、彼女の手から傘を奪い取り、歩きだす。キーキー言うから差しかけてやったら赤くなった。ほんとに、こういうところは昔から変わらない。

隣におとなしく収まったのを確認してまた歩きだす。まあ…これなら雨の日も、悪くない。

小雨の雲の間から、少し光が差すのが見えた。




(ところで、なんで買い物であんなところに?)
(近いなーって思ったから、寄ってみたのよ。)
(…それはまた、なんでだよ…)
(だってドラコ、雨の日はいつも早いじゃない。)
(…、……!?)
(しかもくっらい顔して帰ってくるから…)
(バレてたのか……)








散文サーセン、おわり\(^o^)/



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亜桜 麻槻様より







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