視界は閉ざされた。
ふと気がつけば周りは真っ暗で何も見えない。何があるのかも自分がどうなっているのかも。そもそもの記憶すら曖昧だ。落ち着け、私は誰か…
そうだ。
私は盗賊ギルド ルベリアの唯一の女性戦闘員、ニコラだ。
ボスが女は戦うなっていってるのを無視して唯一修行をこなし、ボスと共に戦えることを許されたARM使い。何故こんなことに────…
「気づいたか」
「!?」
暗闇のなかから澄んだ男の声が響いた。その途端ばっと視界が明るくなり周りが開かれた。
ここは…牢屋…ではない…
拷問室だ…
「アンタ、誰よ」
「おっと、何も覚えていないのか?新陳代謝の良すぎる脳みそだな。」
「失礼ね、それよりコレは何?」
目線の先には拘束された腕に足。ご丁寧に首輪まで付けられて…服も最低限しかのこっていなくてARMも取り上げられてる。
「ククッ…敵をどうしようとこちらの勝手であろう?何を今更」
「敵…そうか、チェスの兵隊か。あんときは気づかなかったけど、もうすでに狙われてたってわけね…油断してたわ」
そう、あれは私が普段通り見回りにいってた時で…後ろからその時に攻撃を受けたんだ…
「それで…私をどうする気?盗賊は仲間を売らないし、私は情報なんてもとからあんまり知らないわよ、選択間違ったわね」
「ふん、そんなくだらん目的で貴様を連れ帰ったのではない。情報など…下の馬鹿共を使えば幾らでもどうにでもなる。」
「じゃあ何故…」
「貴様をチェスにスカウトする為…とでもいっておこうか。」
「…は?何言ってるの…?本気?本気だとしたら相当の馬鹿ね。私が仲間を裏切るとでも?」
「お前は力を持っている。あんな馬鹿な奴らには勿体無い力だ。」
「そんなことどうでもいいの!早くみんなのところに帰して!!」
チェスのスカウトなんて信じられなかった。大体あたしがそっちにはいってなんのメリットがあるっていうの?大体そんなの気休めにしかならない。力なんて私はもっていないから…だってボスに軽くひねられるような弱いただの女よ?ちょっとARMが使えるからって…こんな敵の下っ端につくなんてそうそうごめんだわ!!
「まぁそれはわかっていたことだ。何のためにこの部屋に拘束していると思っている?」
「まさか…拷問であたしを屈服させる気?」
「そんなところだ」
そう言いながら男はコツコツとヒールの音を響かせながら近づいて長い爪で私の頬をなぞった。ピリッとした痛みが入ればたらっ、と紅い鮮血が下っていく。とっさに首を傾ければ男はにやっと笑って私の耳元で囁く。
「またルベリアの同士を犠牲にしたいのか?」
頭が真っ白になった。
そして全てを理解した。そうか、この男は前にルベリアを半壊状態まで死の底に叩きつけたチェスの兵隊だったんだ。そして今私がこの誘いを断れば今微かに復旧をし始めている残りを潰すと…そう言ってるんだ。
私が理解したのを知ったのか、ソイツは軽く嘲笑ったような言い方でどうする?とまた小さく囁いた。
「…最低よ…アンタ…私が仲間になることわかってその条件…いや、脅しをつけたのね」
「別にどうするかは貴様の勝手だからな。私がどうしようが関係のないことだ。ただ…貴様がチェスになった暁にはさらに強くなれる。それだけは事実だ。」
「大嫌いよ…アンタなんて…」
私は拷問室で自殺でもしようかと考えたが見破られていたのか顎をガッ、とつかみ上げられ、馬鹿な真似はするな、と釘までさされてもうどうすることも出来なかった。そしてたった一つしかない選択肢を選ぶことを強制させられたのだった。
「いつか殺してやる…アンタ、名前は?」
「チェスの兵隊ナイトクラス、作戦参謀のペタ。それくらい強くなれ。私を殺せるほどにな」
睨みあった互いの目は真っ直ぐで今から始まる私の苦痛劇場のオープニングに相応しいものだった。
束縛されたmarionette
(逃げることも死ぬことも許されずにただ戦い続けることを私は許容されつづけるのか)(束縛し続ける。チェスの兵隊作戦参謀として…永遠に、な)