私は恋する友人たちを見て、”恋する気持ち”ってどんなものなんだろうとじっと思っていた。なぜなら私は、男の人と話すことが苦手で人見知りな性格のため、異性に恋をしたことが無かったからだ。

そんな私の苦手な人は3年ろ組みの富松作兵衛君。

いつも神崎君や次屋君に怒鳴っているし(二人が原因を作っているのですがね)常に怒っているような顔をしているので、怖いと思ってしまう。

同じ保健委員の数馬君は「作は優しいヤツだよ」と言っているけれど、やっぱり苦手意識は無くならない。
(富松君には失礼だとは思っているんですけどね・・・)


  
そもそも何故私はこのような事を考えているのかといえば、不運故に蛸壺に落ち、足をひねって出ることができなくなりボーっとしていたらふと思い出したからだ。

「はぁ、ここでボーっとしている場合ではないですよね。まだ仕事も残ってますし。」

しかし回りに人の気配はまったくと言って良いほどない。いくら私が不運だからといっ
てもさすがにコレは落ち込みたくなります・・・とりあえず助けを呼ばなくては。

「誰かー!誰かいませんかー!おーい!」・・・まったく返事が返ってこない。しかも足がジンジンしてすごく痛い。


「もう嫌だ・・・。何で私こんなに不運なんだろう。」

じわりと涙まで出てきた。くのたまなのになさけないですね・・・。


―――――――――


「高月っ!起きろって、高月!」

誰かが私を呼んでいる。いつの間にか寝てしまったようで、ぼんやり目を開け声がするほうを見ると、ホッとした表情の富松君がいた。

「大丈夫か?今助けるからな!」

いまいち状況が把握できていない私をよそに、富松君はてきぱきと準備して私を蛸壺から助けてくれた。

「よっし、とりあえずこれで救出完了!どっか怪我とかしてないか?」
「うぇっ!?えっと、あの、足・・・」

急に話しかけられ変な声が出てしまった。うぅっ、恥ずかしい。

「足!?ひねったのか!?」
「は、はい。少しひねってしまったみたいで。」
「大丈夫かよ!?すぐ保健室行くぞ!」

そう言って富松君は私を抱きかかえ走り始めた。俗に言うお姫様抱っこと言うもので・・・ってえぇっ!?は、恥ずかしいんですけれど!

「あ、あの富松君っ!おろ、降ろしてください!自分で歩けますから!」
「足ひねってるんだろ!?こうしたほうが早い!それよりしっかり掴まっとけって!」           
−−−−−−−−−−−

「それで作兵衛が琴葉を此処に連れてきたってこと?」
「そーゆーこと。で、怪我の具合どうなんだ?数馬」
「うん、軽くひねっただけだから2・3日おとなしくしてれば平気だよ」

よかったねと数馬君は笑っているけれど私はそれどころじゃなくて、恥ずかしいとか、男の子はやっぱり逞しいんだとか、思っていたよりも怖くないなとかぐるぐると考えていた。

固まってしまった私をよそに、富松君はあ、と声を上げ立ち上がった。

「じゃあ俺、そろそろ委員会行くな!」
「いってらっしゃい。琴葉ちゃん連れて来てくれてありがとね。」
「おう。高月!お大事にな!」

最後にそう言って去っていった富松君の笑顔を見た瞬間、心臓がドキドキとうるさくって顔が熱くなった。まるで友人たちが言っていた、恋する気持ちのようで・・・まさか

これが、恋?
(おーい、琴葉ー?)
(・・・数馬君、私、恋したかもしれません・・・)
(へー恋・・・・・・ってえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?)

2

[*前] [次#]
[戻る]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -