The feeling that I hid・前



久々の全日本合宿。
そこにまた、俺も召集されていた。
そのメンバーは、大体が知ってる顔ぶれ。
皆相変わらずだな・・・

・・・中でも。
俺にとったら気になる存在が居た。
それは・・・

「小次郎!はいこれ、スポンサーから差し入れだって。」
「ああ、サンキュ。」

そう言って岬からミネラルウォーターをもらう、あいつ。
直ぐ様キャップを開け、飲むその姿にさえ・・・

「・・・ん、松山さん!」
「あ!え・・!?」
「どうしたんすか?あ、これ差し入れらしいっす。」

どうぞ、と新田は俺にもミネラルウォーターを渡す。
その後に、何か心配そうな顔で俺の顔を覗き込んできた。

「・・・どうしたんすか?珍しいですよね、ぼーっとしてるの。」
「・・・そ、そうか?」
「はい・・・大丈夫すか?長旅だから疲れてんのかなーと・・・」
「・・・何言ってんだよ!」

そう言って新田の背中を叩いた。
わっ!?と言って新田は前のめりになる。

「わるいな!でも大丈夫だから安心しろよな!」
「本当ですかー・・・?」

そんな新田に対して笑いかける。

大丈夫。
気づかれていねえはずだ。

俺は、サッカーしにここに来たんだ。
余計なことは考えちゃいけない。
その・・・あいつが気になるその心も、蓋を閉めるべきなんだ。
だから、あいつのことは考えない。
絶対に。

***

「パス!」
「ナイス早田!!」

あれから、順調に3日目のメニューをこなしていた。
でも。
どうしてもあいつのことが気になって・・・

「・・・新田!パスだ!」
「はい、日向さん!」

そう言ってボールを受け取ると、それを見事にゴールに収める姿。
その姿にも・・・見惚れてしまって・・・

「・・・松山?どうかしたのか?」

ハッと石崎の声に我に返る。
俺、練習中なのに・・・

「・・・ああ、日向か?あいつもまた一段と強くなったよなー!!」
「・・・ああ。」
「まああいつが強くなればなるほど、こっちもやる気が出るってもんだ・・・お前もそうだろ?」
「・・・」
「松山?」

日向の名前を出されると、嫌でも溢れ出す、自分の気持ち。
サッカーに集中しなきゃいけない。
そう思えばおもうほど、あいつの存在はデカくなってきていることに、俺は気がついていた。
でも・・・
こんな気持ち、本当は必要ない。
だって、きっと言ったらあいつだって気味悪く思うだろ・・・?
俺は男だ、そしてあいつも・・・

ああ、俺、いつからだっけ・・・
こんなにあいつのことを目で追ってたの・・・

「・・・松山!!」

石崎の叫び声が聞こえたと思ったら、急に意識が遠のいて・・・

体に衝撃を受けたことまでは覚えていたが、そのあとは意識が暗くなった。

***

「・・・ん・・」

ここは・・・?
あれ・・・俺・・・

「・・・目が覚めたかい?」
「・・・三杉?」

何故?
一体・・・

「全く、熱があるのに普通に練習なんてするから・・・」
「・・・熱?」
「・・・まさか、気がついてなかったの?」

三杉は呆れたようなため息をついた。
俺、熱があったのか・・・
だからこんなに頭ん中ぐるぐるすんのかな・・・

「だから君が倒れて、医務室に運ばれてきたんだよ。」
「・・・そう、か・・・」
「日向にあとでお礼いっときなよ?」
「・・・!」
「君のこと、運んできたの日向なんだから。」

日向が・・・俺を・・・?
そう思っただけで、カッと顔が熱くなった。

ヤバイ。
体も熱くなってきて、一気に意識がはっきりとしてきた。
隠さなきゃいけないのに。

でもすぐにこんなに反応してしまう。
俺の気持ちは・・・もう、きっと。
抑えられないところまで来ているんだろうな・・・

「考えすぎなんじゃない?だから熱なんて出すんだよ。」
「・・・え?」
「・・・まあ、君の場合真面目に考えるだろうけど。」

・・・三杉は何を言ってるんだ?
もしかして。
・・・バレてる?

「三杉、お前・・・」

俺がそう言うと、また三杉は溜息をついた。

「・・・まあ、僕ぐらいじゃないかな、気がついてるの。」
「・・・!」

三杉に・・・バレてた?
どうしよう・・・
どうしようたって、どうしようもないはずなのに、俺の頭は混乱していた。

「・・・大丈夫だよ。」
「・・・え?」
「本人には、気づかれてないから。」
「・・・そっか・・・」

その言葉に落ち着く。
でも、よかったような、少し残念なような・・・

「ほんっと、馬鹿だね・・・」
「・・・なんだと?」

聞き捨てならない言葉を聞いて、三杉を睨む。
その睨まれた本人は、おかしそうに笑っていた。

「・・・いや、ごめん。君らしくないとは思って。」
「・・・っ」

その言葉に、顔を背けた。

「・・・俺らしいって、なんだよ・・・」
「・・・君なら、そんな考え込む前に行動に移すと思ってたから・・・」

そう言って、三杉が急に俺の顎を掴んで、顔を三杉の方に向けさせられた。

「・・・!」
「・・・なんで?何をそんなに怖がっているの?」
「・・・っ、それは・・・」

それは。
だって。
普通じゃねえだろ?
こんな気持ち。
日向が好きだなんて・・・

俺はその言葉を、言えなかった。
言ったら、もし肯定されたら・・・
その時のことを考えると、どうしても言えなかった。

「・・・」
「・・・まずは、言ってみたら?」
「・・・は?」

その言葉に三杉を見ると、優しく微笑んでいた。

「言ってみたらいい。向こうの反応なんて、こっちは想像でしかわからないんだし。」
「・・・」
「あいつは、松山の言った言葉を簡単に邪険にするタイプだった?」
「・・・っ、それは・・・っ」
「・・・違うんだろう?だから、松山もそんなあいつに惚れたんだろう?」
「・・・っ」

否定、できなかった。
ああ見えてあいつは、ちゃんと仲間のことも考えてるし・・・
距離は空くかもしれないけど。

でも。あいつは。

「じゃあ、言ってみたらいいよ。もしも何かあったら、僕が骨を拾ってあげるから」
「縁起でもねえよ・・・」

相変わらずにこりと笑いながらさらりととんでもない発言をする。

「・・・まあ・・・」
「・・・え?」

三杉がぽつりといった言葉が聞き取れなかったので、聞き返すと、三杉は困ったように笑いながら、「ごめん、なんでもないよ」っと言った。
・・・まあ、あまり気にしないでおくか。

「・・・三杉。」
「ん、なんだい?」
「・・・ありがとな。」

そう言って感謝の意を込めて笑い返すと、三杉は困ったように顔をそらした。

「・・・まあ、チームの要となる人物に潰れられちゃ、こっちもこまるからね・・・」

相変わらずな三杉。
でもそのくらいに思ってくれていることが、俺には嬉しかった。

「まずは、熱を明日まで下げること、いいね?」
「ああ、サンキュ。」

そう言うと、三杉は部屋から出ていった。
俺は、明日どこかで日向に自分の気持ちを伝えようと決心した。

でも。
まさか、あいつが一部聞いていたことを、俺は知らなかった・・・。


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