ずっと帰りたかった場所



「おめでとう、松山君」

松山君が小田君と喜んでいるところを見つけて、たぶん無事に高校受験に合格したんだと思って、声をかけた。
私がこっちに戻ってくることを言ってなかったから、振り向いた松山君と小田君の顔は、物凄くびっくりしていた。

「・・・藤・・沢・・」

そっと、松山君のそばに行くと、まだ信じられないかのような表情をしていた。
そうよね・・・私も驚いてるもの。
半年ぶりに本物の松山君に会えて。

「手紙じゃ、何も言ってなかったのに・・・」
「驚かせようかと思って、黙って私も受験してたの」
「え、じゃあ・・・」

松山君が言いかけた言葉の先が想像ついて、私はそっと微笑んだ。
・・・嬉しかった。また、一緒の学校に通えるなんて。

「・・・よし!俺はそろそろ帰ろうかなー!!」
「え!?」「は!?」
「邪魔しちゃ悪いだろ?というか、藤沢は俺らと同じ高校受けたってことは・・・もう日本に戻ってこれるんだよな!?」
「う、うん・・・」
「よし!じゃあ先に帰って、みんなの合格パーティーと藤沢の帰国のお祝いの計画立てるわ!」
「ええ・・・っ!?」
「・・・ああ!そりゃいいな!やろうぜ!」
「じゃあみんなに声かけとく!日程決まったら連絡するから!」

「じゃ!」と言って小田君は嬉しそうに手を振って帰って行った。
私たちもそんな小田君に向かって手を振り返す。

嬉しいな、こうやってみんなも私のこと歓迎してくれて・・・
改めてここ「ふらの」に戻ってこれたことを、嬉しく思う。

「・・・と」
「・・・?」
「・・・本当に、日本に帰ってきたんだな・・・」

改めて松山君が私に向きなおって言った。

「・・・うん。」

そんな松山君に対して、ゆっくりと頷く。

「そっか・・・じゃあ、高校も一緒に通えるんだな。」
「・・・うん!」

松山君の言葉にまた頷くと、二人で笑いあった。

嬉しいな・・・。

まさか鉢巻きに託した私の想いに気がついてもらえるなんて思ってなくて。
そして空港まで追いかけてきてくれて・・・
それからも、手紙っていう繋がりができて、今まで以上に親密になれた気がした。
そして・・・また日本に戻ってこれて、松山君と一緒の学校に通えるなんて・・・。

・・・夢みたい。

「・・・なあ、これから予定、あるのか?」
「ううん、今日は何にも・・・」
「じゃあ・・・一緒に帰りながら、久しぶりに話でもしてくか。」
「・・・うん!そうね・・・」

そういって、松山君の隣を歩いた。

「しかし・・・驚いた。まさか急に藤沢がいると思ってなかったからなあ・・・」
「・・・ふふ、でも私も今びっくりしてる。こうして・・・また松山君と、みんなと会える日がすぐ来ると思ってなかったから・・・」
「まあ・・・そうだよな、親の都合だし、アメリカは遠いし・・・」

「でも帰国して受けたってことは・・・藤沢は試験の英語完ぺきかよ・・・うらやましいな!!」と悔しがってる松山君の顔は、前と変わらなく無邪気で、ついつい笑ってしまう。

「・・・なんだよ?」
「ごめんね・・・変わってないなあと思って。」
「・・・そうか?」
「うん、松山君が変わってなくて、嬉しい。」

そういって笑うと、松山君はきょとんとした表情になった後、急にふいっと顔をそらした。

・・・?
何か癇に障ること言っちゃったのかな・・・?

「・・・あ、ここ!」

急な松山君の声に、指をさしている方向を見た。
そこは・・・

「・・・あ」

懐かしい。
よく学校のグランドが使えない時にみんなで練習に使ってた空き地。
結構広くて、練習するには丁度いい所だった。

「お、丁度ボールもある。」

そう言いながら、ふいっと松山君は私を見た。

「・・・」
「・・・蹴りたいんでしょ?」

顔がそう言ってたから、私にはすぐに分かった。
その素直な反応に、思わず、笑いがこみ上げる。
「いいよ」というと、松山君の顔はパァっと嬉しそうな表情に変わって、「サンキュ!」といってボールの方に走って行ってしまった。

本当に、変わってないなあ・・・

サッカーにかける情熱が人一倍すごかった。
何をやっててもサッカーのことしか考えてなくて・・・。
そんな松山君に惹かれるのも、そんなに時間が掛からなかった。

目の前で器用にリフティングを行っている松山君。
そんな彼を、私は微笑みながら見守っていた。

・・・やっぱり、好き・・。
改めて会って、思い知らされる。

「・・・ふぅ、やっぱサッカーしてる時が一番だぜ!」
「・・・あ、汗でてるよ!」

いそいそとカバンからハンカチを取り出して、渡す。

「・・・あ、わりぃ、サンキュ・・・」

松山君はそのハンカチを受け取ってくれた。
そしてそのまま汗を拭く・・・のかと思ってたら、そのハンカチを見つめたまま、止まった。

「・・・どうしたの?」

本当にどうしたんだろう・・・
不思議に思って聞いてみた。

「・・・いや、いつも・・・こうやってお前は見ててくれてたよな、って思って・・・」
「・・・!」
「自主練してた時も、気づけば藤沢がそこにいて、いつも俺にタオルを差し出してくれてた。」
「あ・・・」
「いつもいつも、お前がいて・・・」
「・・・」

松山君が申し訳なさそうに私を見た。
私も、松山君を見つめて、黙ってその言葉に耳を傾けた。

「Jrユースの時とか、その後の自主練の時に、そのことに気がついた。もう、藤沢はいないんだって。」
「・・・」
「いつも、ありがとな・・・そして、気づけずにいて、ごめん・・・」
「・・・そんな!私が好きで勝手にやってたことよ・・・それに、私はサッカーをしている松山君が・・・」

その先が、恥ずかしくてどうしても出てこなかった。
思わず顔を赤くして俯いてしまう。

・・・松山君が、好き・・・なの。

もう一歩なのに、その言葉は出てこない。

「・・・あとさ、俺・・・なんか・・・しっくりこなかったんだよな。」
「・・・え?」
「練習して、ふと周りを見てもお前がいないんだ・・・藤沢がいる事が当たり前のように思ってたのに、居なくて・・・なんだか、寂しくなって。」
「・・・!」
「・・・それで気がついた。俺・・・」

「俺も、藤沢の事好きだ。」
「・・・!」

松山君が・・・私のこと・・・?
声が、出ない・・・。
・・・本当に?

そう思ってると、松山君が手を握ってきた。

「・・・ずっと、お前が帰ってきたら言おうと思ってた・・・だから、今日藤沢を見た時、驚いたけど・・・嬉しかった。」
「・・・っ」
「ごめんな、気づくの遅くて・・・でも、もう離さない。」
「・・・松山君っ」
「・・・また、一緒にサッカーしようぜ。」

その言葉に、こくりと頷いた。
その反動で、涙が出てきた・・・。

本当に、嬉しい・・・

「俺、本当にお前が好きだから・・・」
「・・・うん」
「俺・・・藤沢をマネージャーとしても、彼女としても、国立競技場に連れていきたい。そして・・・一緒に全国制覇したい。だから・・・」

松山君は、私の目を見た。
私も、松山君の真剣な目を見つめた。

「藤沢と付き合いたい。」
「・・・!」
「・・・だめ、か・・?」

その言葉に、慌てて首を横に振る。

「私も、松山君の事が好きだから・・・彼女として、そばで応援したいです。」

そう伝えると、松山君は私のことを抱きしめてきた。
そして私の耳元で囁いた。「ありがと」という言葉と、そして・・・

「おかえり」と・・・





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555番のキリ番リクエスト品です!
555番をとって報告してくれた方へ!

松美(松山×美子)は昔っから好きでした!
でも書いたのは初めてという・・・(笑)
今回は、無印のエピローグあたり、美子ちゃんと松山君の再会シーン辺りからです!
小田君は気がきく(笑)
いろいろ想像できますが、
今回は美子ちゃんに言われ、美子ちゃんがいなくなった後に
松山君が美子ちゃんの存在の大きさに気がつくといいなと思い・・・
また、「松山君が変わってなくてうれしい」という美子ちゃんの気持ち。
その二つを合わせて書いてみました!

こんな感じでもよかったら、もらってください!
リクエストありがとうございました!!

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