一夏の思い出
「二人とも、まだ時間あるかな?」
その言葉に二人は三杉を見る。
三杉は二人をただニコニコと眺めていた。
試合の都合で偶然近くにいた3人。滅多に会えない(特に松山は本拠地が北海道なため)し、どうせなら久しぶりに・・・ということで、東京の三杉の行きつけの店で3人で集まっていた。そのため、岬と松山は、今日は近くに宿をとってある。
「ああ、俺は別に大丈夫だけど」
「僕も大丈夫だよ」
そんな三杉を不思議に思いながら、素直に頷く。
「じゃあ、とりあえず店を出ようか。」
笑顔で立ち上がる三杉。いつもならまだ飲み足りない時間、二人は三杉の意図が全くわからなく、顔を見合わせていた。
とりあえず会計を済ませて、店を出た3人。すると三杉は二人に「ついてきて」とだけいい、先にどんどん進んでしまう。
「おい、三杉どうしたんだよ?」
さすがに何をするかわからないため、松山が聞く。もしかしたら三杉はもう酔いがだいぶ回っているのかもしれない・・・そう思ったため、立ち止まった。
一瞬三杉が振り返る。そして二人を見て、ふっと微笑んだ。
「いいから。ついてきて。」
そういって、また先に進んでしまう。
岬と松山はまた顔を合わせて肩をすくめる。酔っている様子でもないし、どうやら黙ってついて行くしかない。そういう結論に行ったったのか、二人は三杉の後を追いかけた。
***
あの後、三杉は「先に向かいの公園にいってて」と言って、ふらりとコンビニに入っていった。岬が呼び止めようとしたが、その前に三杉は中に入ってしまった。だからしょうがなく二人は公園に行き、中でブラブラと三杉を待っていた。
「たく、どうしたんだよあいつ。」
「別におかしい様子でもなかったけど・・・」
岬の言う通り、それまでも全くおかしい様子などなかった。ただいつも通り、お互いの試合の反省や、プレイについてなど、また仲間の近況の報告などを喋っていただけのはずだった。
「それにしても・・・」
「・・・ん?」
「東京は夜でもあちぃなー・・・」
「あー・・・」
パタパタとTシャツを仰ぐ。松山は本当に暑そうにベンチに座った。そんな松山をみて、岬がクスリと笑う。
「やっぱり耐えられない?」
「当たり前だろ・・・三杉やお前はすげえな、よくこんなとこで寝られるわ・・・」
「そりゃ、今の時代エアコンというものがあるからね」
そう言って笑うと、松山は「うげっ」と顔を顰めた。そんな会話をしていたら、三杉が手に袋を持って走ってきた。
「ごめんごめん!」
「お前何買ってきたんだよ?」
そういって松山立ち上がり、岬と共に三杉の方へと寄っていく。三杉は二人の前で袋を広げた。中に入っていたものとは・・・
「ビールと・・・花火?」
「うん、せっかく夏に集まったんだしね。」
「公園だと水道もあるだろう?」そう言いながら、中をガサゴソとあさり、一緒に買ったであろうロウソクを出した。
「花火って・・・お前何歳だよ・・・」
ウキウキと楽しそうに準備を始めて行く三杉をみて、松山は呆れた顔をした。「まあまあ」と岬はそんな松山を宥める。
「でも久々にやるのもいいかもね」
岬も三杉の準備を手伝い始めた。松山はそんな二人を見て「え?」とポカーンとしていたが、自分だけ動いてないのも申し訳ないと思ったのかその輪に入っていった。
***
「すっげー!これ綺麗だぜ!!」
「見ろよ!」とあんなに乗り気じゃなさそうだった松山が、今は一番はしゃいでいた。そんな松山をビールを飲みつつのんびりと眺める岬と三杉。
「あんなにはしゃいじゃって・・・」
「やっぱりこうなると思ってたよ・・・」
絵を書くようにして手持ち花火を振り回す松山。そんな姿を眺めながら岬と三杉は呆れながらも笑っていた。そう言いつつも、二人も松山ほどではないが、花火をのんびりと楽しんでいた。
「・・・なんで急にやろうなんて思ったの?」
「・・・ん?ああ・・・なんでだろう?急に久々にやりたくなったんだ。それに・・・」
「・・・それに?」
岬は三杉の顔を眺める。三杉は未だに火を放っている花火を眺めながら、微笑んだ。
「・・・たまにはこういう思い出を作るのもいいだろう?」
そういうと、花火はゆっくりとその光を失っていった。岬はそんな三杉を黙って眺めていた。三杉は次の花火へと移そうとしていた。ゆっくりと新しい花火に火を点け、その明かりがまた三杉の顔を照らしていく。
花火に照らされた三杉の顔は、ただ穏やかに花火を眺めていた。
岬が持っている花火も、気がついたらもうすでに火が消えていた。
「・・・そうだね」
三杉の言葉に、昔みたいにこうやって誰かと思い出を作るのも悪くないと思いながら岬は笑い、また新しい花火をとってそこに火をつけた。
「三杉ー、もう数本しかねえぞー?」
また新しい花火をつけようとして中身を確認したら、残りが少ないようであった。そう呼びかける松山に気がついた三杉は、ふとそっちを見た。
「・・じゃあ、それが全部終わったら掛けでもしようか。」
「掛け?」
松山と岬の声がハモった。
***
「何かと思えば線香花火かよ・・・」
手持ち花火を、線香花火以外は全てやり終えた頃、三杉が二人を呼んで線香花火を渡した。
「いいかい?これは勝負なんだから。」
急に挑戦的な目で二人を見る。
”勝負”
その言葉に、特に松山の目つきが変わった。
岬はキョトンとしているが、三杉の目が試合をする時のような鋭い目つきに変わったことに気がついた。
「火が一番最後まで残ってた誰かのチームが、今年のリーグ戦で、3チームの中で一番上に立つ」
その言葉に松山が「げ」と声を漏らす。
「それって・・・逆に言うと、早く落ちた人のチームは3人のチームで一番ビリってことだよね?」
「そういうこと。じゃあ火をつけるよ、いいかい?」
「ま、まままままてって!!まだ俺心の準備が・・・」
「じゃ、スタート」
「て、おい!!」
3人の線香花火が一斉に火花を散らす。
3人とも目つきが真剣そのものへと変わっていた。如何に火を残すか・・・じっと黙ってその勝敗を見極めていた。
その時、にやりと三杉が笑ったことに、岬は気がついたが、松山は気がつかなかった。
「・・・っぎゃあぁぁー!!!」
そして公園に悲鳴が響いた。
***
「・・・・」
「あはははは!!」
二人が爆笑している中、松山は一人プルプルと震えていた。
「・・・ってめ!ひきょうだぞ!?」
「だって・・・っそんなに松山が熱中してるとは思わなかったから・・・っ!!」
「あー!面白かった!!」
「岬!お前もぐるかよ!?」
「ひどいな松山・・・ただ三杉くんが何かするかもとは思ってたけど・・・」
そう言って、また岬は笑い出す。松山はそんな二人を黙って睨みつけた。
「・・・でも」
一通り笑い終えた岬は、目をこすりながら一旦ひと呼吸置く。
「実際はどうなるかまだわからないよね。」
「・・・当たり前だろ!?こんな卑怯な手の勝負なんか誰が信じるかよ!?」
「・・・ま、正々堂々とやっても僕は負けないけどね。」
「俺だって負けねえよ。」
また挑戦的な笑みを浮かべ松山を見つめる三杉。松山もそんな三杉に対して、睨みつける。そして三杉と同じようににやりと口の端を吊り上げた。
そんな二人を見て、岬もまた笑う。
「僕だって、負けないから。」
そんな岬をふっと三杉と松山は見る。3人はお互いの顔を見合わせ、皆同じように笑っていた。
いつもは皆敵同士。でもこうやってたまに一緒に何かするのも悪くないな・・・。
また、来年もこうやってお互いを高めていきたい。
三杉はそう感じていた。
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6060キリ番リクエスト品です!
『夏の思い出(3M)』という内容でした!
まずは何故6060がキリ番なのかといいますと・・・
6000は私が踏みました(笑)
むっちゃ悔しかったので、「6」関連の近い数字にしてみました(笑)
夏の思い出ということで・・・
この3人はいつ集まったかは聞かないことにしてください(笑)
夏だし、ただ飲むのだけじゃつまらないしなー・・・と思い。
夏といえばやっぱり花火!
そして打ち上げの方はこの前書いたので、今回は手持ち花火ネタで!
でも松山くんは三杉くんに何をされたかは・・・ご想像にお任せしますv(笑)
そして”何か”された松山くんは、早くも負けてしまったようでした(笑)
リクエストしてくれたmika様へv
こんな感じでもよかったら、貰ってくださいーv
リクエストありがとうございました!(´∀`*)
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