初めては、思い出の・・・
雪も段々収まり始めて、もうすぐ4月となる頃・・・
美子は公園の入口に佇んでいた。
そしてチラッと腕時計を見る。
「藤沢ー!!」
そうしているうちに、美子を呼ぶ声が聞こえた。
そっちの方向を見ると、松山が走ってやってきた。
「松山君!」
「・・・っ、はぁ・・・はぁ・・・、わりぃ・・・遅れち、まった・・・」
急いできたのか、必死に息を整えている。
そんな松山を美子は心配そうに見つめた。
「走ってこなくてもよかったのに・・・大丈夫?」
「・・・あ、ああ・・・もう平気・・・」
そう言って一瞬美子をみて、ふっと目を逸らす。
「・・・お前を待たせるわけ・・・いかねえだろ・・・?」
そういう松山の横顔は、頬がほんのりと赤く染まっていた。
その表情を見て、美子も赤くなり俯く。
***
8月、全国サッカー大会の後、エアポートで別れた二人。
その後は文通という形でずっと繋がっていて・・・
この間の受験の時に再会した。
そして二人とも同じ高校を合格して・・・その後、二人は無事お互いの想いを交わすことができた。
そして、今日の待ち合わせは松山からの提案であった。
「高校合格祝いに・・・二人でどっかいかねえか?」
そんな会話をした時、二人とも顔が真っ赤になっていた。
でも、美子は嬉しくてゆっくりと頷いて返事をした。
***
「なあ、どこいきたい?」
松山は誘ったがいいものの、こういった経験は初めてで・・・どこに連れてこうか前日まで迷っていた。
でも、今回ばかりは小田や他のチームメイトにも相談できない。
(相談したら・・・冷やかしの嵐になるに決まってんだろ・・・)
そう思いつつも、中々いい案が思いつかなかった。
すると、美子が口を開いた。
「・・・中学校、行きたいな・・・」
ポツリと溢れる言葉。
そんな美子を松山は見た。そして美子も松山を見つめた。
「松山君やみんなと一緒に過ごした場所、もう一度行っておきたいな・・・だめ、かな?」
そう言って首をかしげる。
しばらく美子を黙って見ていた松山は、急に笑顔になった。
「よし、いこうぜ!」
そんな松山に釣られ、美子も笑顔で「うん!」と返事をした。
***
いつもなら休みでも部活をやっている校舎。でも今日に限って静かであった。
「今日部活なかったのかな?」
「へえ、ラッキーだな!」
そういって嬉しそうに校舎に入る。
そして二人が向かう場所は・・・当然、思い出の場所。
「久々にきたな・・・」
「私は半年ぶり・・・かな。」
「・・・そうだな。」
目の前に広がるグラウンド。
ここで、松山も美子もチームメイトと一緒に3年間過ごしてきた。
ここで眺めているだけで、数々の思い出が思い出される。
二人の間に、言葉はいらなかった、
言葉にしてしまったら、それは到底1日では語りきれない思い出ばかりで・・・
黙ってグラウンドを見つめていた美子は、ポツリと漏らす。
「松山君が一番怪我をしてたよね・・・」
「・・・ん?」
「無茶をすることが多くて・・・」
「・・・おいおい、度胸のあるプレイと言ってくれよ」
ははっと苦笑しながら松山は言う。
そんな松山を、美子は微笑んで見た。
「あの時・・・手当をするのは最後かと思ってた。」
その言葉に松山も笑うのをやめ、美子を見た。
あの時。
それがいつを指していたのか・・・松山にもわかった。
「びっくりしたけど・・・」
「びっくりしたのはこっちだぜ。」
「え?」
「・・・急に居なくなって・・・本当に・・・」
(落ち着かなかったんだからな・・・)
そこまでいうと、松山はふいっとまた顔を背けた。
「でも・・・」
「・・・でも?」
「・・・そのおかげで、気づけた。」
「・・・何に?」
美子は首をかしげて松山を見つめた。
松山も、そんな美子の方をもう一度見る。
「・・・その、藤沢が・・・」
「・・・っ」
松山は言った言葉は小さすぎて、風によって消された。
でも、美子にはきちんと届いていた。
その証拠に、一瞬震えた美子は涙ぐんで「嬉しい・・・」と零した。
「・・・な、泣くなよ!?」
「・・・だ、だって・・・」
美子が段々俯き始めると、慌てふためく松山。
しばらく「あー」「うー」と悩んだように頭を掻くと・・・
急に美子の手を取った。
「・・・っ!?」
美子は驚いて、その手を見る。
「・・・走ろうぜ!」
松山は笑顔になって、美子にそう言った。
呆気にとられていた美子は、松山の笑顔を見るなりまた笑顔になった。
「・・・うん!」
3月も終わりそうな頃・・・
天気も晴れて雪解けの中、思い出のグラウンドを走ったことは、二人だけの秘密・・・。
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4000キリ番リクエスト品です!
『松美で初デートのお話』という内容でした!
やっぱりどちらか視点で書いたほうがよかったかなー!?と反省しております><
初デート!ということで。
予想としては、再会したあとだなーと思い。でも高校入ってからだと部活で忙しすぎていけなさそう(笑)
なので、今回は松山君が少し余裕のある合格後〜入学式の間でデートしてもらいました(笑)
リクエストしてくれた葉桐瑞穂様へv
二人を汚してしまってすみませんー!!
こんな内容でよろしかったでしょうか?
リクエストありがとうございましたvv(´∀`*)
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