ミルクティー 〜やっと気づいた恋心〜
遅くなってしまった・・・!!
季節も夏に近づいてきた夜、私は学校の帰りだった。
図書室で勉強していて、ついついこんな時間までやってしまった。
もう夏に近い・・・とは言え、夜の一人道は若干怖い。
早く帰ろう・・・!と思い早歩きでいると、自販機の灯りが見えた。
「のど乾いたな・・・」
ジュースでも買って帰ろうか、とまた自販機の前で立ち止まった。うーんと何を飲むか考えてると・・・
「また悩んでる?」
「きゃっ!?」
びっくりして声を上げて、しかも躓いて転んでしまった。・・・なんてドジなの、私・・・
「だ、大丈夫?名無しさんさん!!!
名前を呼ばれ、えっ?と相手の顔を見上げると・・・
「井沢くん・・・!」
また、井沢くんがいた。井沢くん:はしゃがみ込んで私をみた。
「ごめん、驚かせて・・・」
「あ、い、いや・・・別に大丈夫だよ!?」
慌てて私は大丈夫だとアピールする。
だって、私が躓いただけだし。そう思ってたら井沢君が手を差し出してきた。
「・・・?」
どうしたんだろ、井沢くん。
不思議に思い、その手をじっと眺めた。そしたら井沢君は「立てるか?」と聞いてきた。
ああ、彼は私の手助けをしてくれるのか。
私はその手を取った。そしたら井沢君が引っ張ってくれた。
「わぁ!?」
「うわっ!?」
井沢くんの力が少し強くて、力の入っていなかった私は勢い余って井沢君の方に倒れた。井沢くんが慌てて抱き留めてくれた。
くれた・・・のは、いいけど・・・
「・・・」
「・・・」
お互いに黙ってしまった。
これじゃあ私が抱きついてるのと同じ感じだ。
どうしよう・・・心臓が、ドキドキする・・・
もう少しこのままでいたい・・・気もする・・・
「わ、悪い・・・」
井沢君が私から身を放した。
・・・なんだか、ちょっとだけ気持ちが沈んだ。
なぜかは、わからないけど・・・
「ごめんね、私も・・・」
でも相変わらず、私の心臓の鼓動が止まらない。
顔が、体が熱い・・・。
「・・・っ、なあ・・・!」
「・・・っ」
井沢くんに突然声を掛けられ、思わず顔を上げる。
井沢くんと目が合った。井沢くんの目の奥から、何か熱いものを感じる。
目をそらしてはいけない・・・というか、捕らえられたように体が動かせない。
暫くシンとした空気が続く。
「・・・あ・・・、と・・・・何、飲む・・・?」
井沢くんが急に目を自販機の方にやり、コインを入れる。
私は何だかホッとしたような、がっかりしたような…
そんな不思議な気分になった。
「・・・、じゃあ・・・冷たいミルクティで・・・」
一旦頭を冷やそう、でも喉が乾いて糖分も欲しい。
私はそれを選んだ。
ガタンと静かな空気にジュースが落ちる音が響く。
「・・・はい」
井沢くんがそれを取り、私にあの時のように差し出してくれる。
ただあの時と違うのは、目がみれない。
ジュースを受け取る際、井沢くんの指先と少しだけ触れた。
チリッと指先が熱くなり、背筋が震える。
何だか、自分の体が自分のものじゃないみたいに思えてきた。
「あ、りがと・・・」
それを悟らせないように、お礼を言って受け取った。
「家まで、送る」
「え、いいよ!?別方向みたいだし」
「夜も遅いし危ない、それに…」
「・・・?」
「・・・っ、なんでもない・・・」
井沢くんが目をそらした。
とりあえず帰るぞ、と前を歩きだした。
止まっていた私は、それをみて慌てて追いかける。
「・・・・っ・・・」
何だか色々なことに胸を締め付けられた気分のように胸が痛い。
でも、甘い、くすぐったい痛み。
たぶん、私はこの人のことがずっと好きだったんだろう。
あの自販機での偶然の出来事のせいで。
隣を歩く井沢くんの横顔を盗み見る。
やっぱり、かっこいいけど・・・ただかっこいいだけじゃない。
好きだと自覚した今、プラスアルファな感情が私の中にあった。
それが自然と行動に表れていたらしく・・・
「・・・!?」
井沢くんはびっくりして私をみた。
私は慌てて目を伏せた。
恥ずかしいけど、それ以上に井沢くんに触れたかった。
手を繋いで歩きたかった。
私は井沢くんの手を自分の手と無意識に繋いでいたのだ。
拒否されたら、明日からどうしよう・・・そんなことをぼんやり考えていたら、手を握られる力が強くなった。
「・・・!」
今度は私がびっくりして井沢君をみた。
井沢君は目をそらしていたけど・・・
「こっち、みるなよ・・・」
と恥ずかしそうな声で小さくぼそりと呟いた。
私はその声に思わず笑ってしまった。
井沢君はむっときたのか、何か言って・・・また楽しい帰り道になった。
前と違うのは、私の気持ちと、今手を繋いでいるということ。
そして、ちょっとだけでも・・・井沢くんと同じ気持ちだったって思って・・・いいのかな?
――――――――――
こちらも去年の11月頃に「ワカドシヨリ〜実は青春真っ只中〜」のみる様、結宇様に捧げた井沢ドリームでした!
こちらもタイトル、文を少し修正しております。
くっつきそうだけど・・・くっつかないという(笑)
甘酸っぱさを感じてもらえたら!と思います!!
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