ミルクティー 〜予感〜
ふっと、溜息をついた。
今日も窓から眺める、サッカー部。
うちのサッカー部は全国区、しかも毎年夏、冬の大会ともに準優勝・・・といっても、かなりすごいことだと思う
。現レギュラーの岬くんを筆頭とした何人かは、2年前の国際ジュニアユース大会に選抜メンバーとして選ばれていた。
そんな凄いメンバーが集まっているうちの高校はすごいと思う。
中でも・・・――
「それっ、滝!」
「さんきゅっ!井沢!!」
――井沢くん。
彼は南葛高校でかなりもてている。
隠れファンも多い。
「今年も、同じクラスになったけど・・・」
話してみたいが、なかなか滅多に機会がない。
3年間同じクラスなのに・・・・・・あまり接点がない。
***
1年の冬の時だったろうか・・・――
「さむー・・・っ」
下校していたが、あまりの寒さに縮こまりながら帰っていた。
「あ・・・」
そこで自販機を見つけた。
目に付くのは、温かいミルクティー。
どうしようか、買ってしまおうか・・・何故かうーんと自販機の前で悩んで難しい顔をしながら、立ち止まってしまった。
すると、後ろから手が伸びてきた。
「――・・・っ!!?」
びっくりして固まると、その手はコインを自販機の中に入れていった。
「何が良い?」
後ろから突然聞き覚えがある声が聞こえて、後ろを振り返ると・・・
「・・・い、井沢くん!?」
笑いを堪えた井沢君が居た。
「・・・ぷっ、だって名無しさんさん、ずっと難しい顔して自販機の前に立ってるんだもの・・・っ」
あははと井沢くんは笑っていた。
笑われて恥ずかしい気持ちと、むっときたことで、顔をしかめる。
・・・ああ、自分の顔が今真っ赤なのがわかる。
「ひどいっ、井沢君!」
「ごめんごめんっ、そう怒るなって!」
まだ笑いながら、何が良い?と井沢君は続けた。
私ははっと気がついた。
「べ、べつにいいよ!!」
「そう?・・・じゃ。」
といって、井沢君は温かいミルクティーのボタンを押した。
あ・・・いいな、と思いつつ、私はそれを眺めた。
そしてそれを自販機から取り出すと、私の前に差し出した。
「はい、ほっかいろのかわり。」
「・・・え?え??」
「寒いんだろ?耳が真っ赤。」
優しい笑顔でそう言ってくれた。
その瞬間、私の中で何かが弾けた気がした。
「あ、ありがと・・・」
「気にすんなって」
それから分かれ道まで私たちは話しながら帰った。
井沢くんが、今日は珍しく練習がないこと、また珍しく一緒にいるメンバーがみな用事があって一人で帰宅してたこと、歩いてると珍しく自販機の前で顔をしかめながら立っている女の子がいたこと、まさか同じクラスの私だったこと・・・など笑いながら話していた。
井沢君がここまで喋ってくれるなんて・・・私も珍しい井沢君の一面がみれた気がして、心が温まった。
最後のはちょっと引っかかったけど・・・
でも、あの時弾けた感じがしたのはなんだったんだろう?
3年になりたての今、まだ原因がわかってない。あれ以来井沢君のことをよく気にかけてる自分がいるのは確か。
なんだろう、この気持ち。
***
「席替えをするぞー!」
あれから一週間後、ロングホームルームで席替えをした。
友達の近くならいいけど・・・
「名無しさんどこだった〜?」
「41番・・・てことは、窓際の後ろから2番目かな?」
「いーなー!!私廊下側の前から2番目だった・・・」
「離れちゃったのか〜・・・」
残念、とお互い言いつつ、席の移動を始めた。
この教室はサッカーグラウンドが近く窓から見えやすい、窓際でよかった〜・・・と外を眺めていると・・・
「隣よろしく、名無しさんさん」
と声を掛けられた。
この声は…と窓と反対の隣をみると…
「井沢くん・・・!」
「同じクラスなのに、あれから話すチャンスもなかったな」
あれから…多分井沢君はあの冬の出来事を話してるんだろう。
「あ、あれは…!もう忘れてよ!!」
「俺は珍しい名無しさんさんの一面が見れて嬉しかったけど?」
私は恥ずかしさを思い出し顔を赤くしながら言うと、また思い出し笑いしながら井沢君は言う。
その言葉に、同じこと思ってた…?とドキリとしてしまった。
・・・嬉しいかも。
「・・・あ、面白さのが勝ってたかも。」
・・・前言撤回。
高3、春の訪れと共に、私にも新しい風が訪れようとしていた。
原因がわからないこと気持ちも、近いうちにわかる日が来る予感を感じながら・・・
―――――――――
去年の11月頃に、「ワカドシヨリ〜実は青春真っ只中〜」のみる様、結宇様に送らせていただいたものです!
井沢くんのドリームでした。
のせておkとのことでしたので!ありがとうございます!!
少しだけタイトルと文を修正しました。
甘い甘い学生の恋を目指しました。
ざ・青春!て感じで(笑)
これだけでも読めますが、実は続きます(笑)
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