もうすぐ今日が終わる。
でも、恋人である名無しさんからの連絡は一向にない。
さて、どうしたものか…。


Case6 〜Franz Shestar 〜



そして次の日。

「え!?」

俺が言った言葉に、チームメイトであるマーガスとビクトリーノは目を丸くした。

「名無しさんからチョコもらってない!?」
「…そうなんだよね、て二人揃って叫ばないでくれる?」

二人の声の大きさを、苛立ち気味に注意する。
ビクトリーノは大声で笑い始めたので、とりあえず蹴っといた。
隣のマーガスから「ひぃ!?」という声が聞こえた気がしたけど、気にしてる余裕なんかなかった。

「…で、とりあえずどうすんだよ?」
「マーガスはどう思う?」
「…俺ぇ!?」
「とりあえず考えられるところから潰していこうと思ってね。」

だからマーガスとビクトリーノを練習のあとに呼び出した。
自分だけで考えてると、悪い方向にしか思いつかなかったので。
ビクトリーノ…はどうでもいいとして。
マーガスも昔から名無しさんとは親しいから、客観的にみての意見を聞きたかった。

うーん、とマーガスは腕を組んで考えている様子だった。
みていると、段々顔が渋くなっていった。

「…シェスターさ、連絡はしたのか?」
「…いや、まだしてない。」
「俺、思うんだけど…」

なんとなくマーガスの顔が青ざめていた。

「…多分、名無しさんのことだから、忘れてるんじゃないのか?」
「まさか、そんなことマーガスじゃあるまいし、あり……」
「…」
「…うる。」

マーガスの言葉に思い出した。
確か最近忙しいって言っていた気がする。

名無しさんは大学に通っていて。
そこで研究をしていた。
その発表会が近いらしく、大学に半分缶詰状態という話を聞いていたのを思い出した。
なるほど、それならバレンタインという行事を忘れてもしょうがない。

そして名無しさんは一点に集中すると、他のものが見えなくなる癖が昔からあった。
だからマーガスの言葉にも頷けた。

そして二人と別れたあと、俺は携帯を手にとって名無しさんに電話をかけた。

「もしもし?」

名無しさんの声が聞こえた。
何日かぶりの声に、心が一瞬和んだが、今はそれどころじゃなく。

「名無しさん、今大丈夫なの?」
「うん、平気だよ。珍しいね、シェスがかけてきてくれるの。」
「まあ…ね。ひとつ確認したいことがあって。」
「ん、何?」

その名無しさんの様子を聞いてると、全然覚えてる気配がない。

「あのさ…昨日何の日だったかわかる?」
「昨日?昨日はねー…」

名無しさんの声が急に止み、沈黙が落ちる。

「わかった!」

何だか嬉しそうな声に、嫌な予感がする。

「ポーランド・ソビエト戦争が開戦した日でしょ!?」

予感があたってしまった。

「…えーと…」

何から突っ込むべきだろうか。

「え?違うの?じゃあね…」

まさか、2回目も違うものが来るんじゃ…ありうる。

「世界最初のデジタル電子計算機ENIACが公開された日!!」

電話を持ちながら、俺は頭を抱えた。
まさかこうも外されるとは…

「えー…じゃあね、ふんどしの日?」

日本限定らしいけどー、という言葉まで聞こえるけど、なんで日本に詳しいんだよ!?
もう頭が痛くなってきた…

「違う?じゃあ…」
「もういいよ…」

脱力しながら告げる。
もう、変な解答は聞きたくない…。

「ねえ、名無しさん。」
「何?」
「…バレンタインって、知ってるよね…?」

「…あ。」

「あ」って聞こえたよ、今。
うん、「あ」で固まった音まで聞こえたよ。

「…シェスうぅぅー!!!!」
「…うん、何かな?」
「ごめんなさぁぁいぃぃ!!!」

キーンとするような声で電話口で叫ばれても。
俺は思わず携帯を耳から離した。

「…どうせ、忘れてたんじゃないかなとは思ってたけど。」
「…うう、ごめんなさい…」
「まあ、まだ忙しかったんでしょ?」
「そうだけど…」

でも…と名無しさんは続ける。

「…そんなの、いいわけじゃない…」

そんな泣きそうな声出されても…
今離れてる俺じゃ慰めることができないから、泣かないでよね。

「じゃあさ」

そんな名無しさんに提案をしてみる。

「明日、時間ある?」
「明日って16日だよね?」
「うん。」
「…大丈夫だよ!一日中空いてる!」

その言葉に、俺は思わず笑みを浮かべた。

「じゃあ、明日一日、名無しさんをリザーブしていい?」
「…へ?」
「バレンタインの代わりに、俺を楽しませてよ。」
「…いいの?」
「いいのって…俺が言ってるんだからいいに決まってるでしょ?」

そっかあ…と納得した声が聞こえた。
その言葉には嬉しさが含まれてた気がして。
俺も嬉しくなった。言わないけど。

「でも、」
「…でも?」
「…楽しませてくれなかったら、どうなるかわかってるよね?」

挑戦的に俺は告げる。
もちろん名無しさんがなんて答えてくるかなんてわかってる。

「わかるわけないじゃん!だって、私は絶対シェスを楽しめられるもん!」

嬉しそうに名無しさんは言った。
まあ、そのとおり、名無しさんと居ると楽しいことしかないんだけどね。




《おまけ》

次の日、名無しさんにラッピングされたふんどしを渡された時は…本気でどうしようかと思った。
松山に送っておいて正解だった。
「まじで!?スッゲー嬉しい!!」と喜ばれた。
松山の趣味が余計わからなくなった瞬間でもあったけど。






――――――――――
これだけあとがきを付けさせてください!

ふんどしの日=2月14日
これは本当にあるみたいです(笑)
Wi●i参照です。

あと、松山くんと仲がいい設定になってますが、これは私の趣味なので・・・!
申し訳ございまぜん!

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