Beast



板チョコ*

(社会人ゾロ×学生ルフィ)




パリンと小さな欠片を
そっと貴方の舌に乗せて……




バレンタイン当日に「今日がバレンタインだ」なんて…。気づくのが遅すぎて。どうしたものかと、財布を覗く。

いつものように、財布の中身は寂しくて……






「ただいま。」
とリビングへ…

ソファーに座る、愛しいルフィの顔を見て、ゾロが微笑む。
「お土産…」

手に持った紙袋には、高価なチョコレートがたくさん入っていて……

「それっ…」
「職場で貰ったんだ。ルフィ、甘いの好きだろ?」
とそっとルフィの前へと移動し、小さな体に合わせるように少し身をかがめる。

ゾロは、真っ赤な包みを開け、まん丸のチョコレートを摘む。

「これ、この前テレビでやってた店のやつ。ルフィ食べたいって言ってた…」
と甘い匂いを漂わせチョコレートがルフィの唇へと、近づき……

「はい、あーん」


ルフィの唇が少しだけ開き、ころんとチョコレートが口内で転げる。


口の中で上品な甘さが広がり、程よい苦味が後を追う…


「美味いか…?」

と、ゾロがルフィを覗き込み………




「おい、しい……」

すーっと頬が濡れた……


「どうしたんだ?ルフィ…!」

ゾロが驚いたように、ルフィの肩を掴んで…



ルフィの瞳からは、涙がホロホロ流れて…


「ゾロっ…ごめん…」


先程まで小さな背中に隠れていたルフィの手が、ゾロの目の前に出される。

柔らかな、その手の上には、どこにでも売ってあるような板チョコ……


「バレンタインだって、忘れてて…」

ルフィの冷たい手はぎゅっとチョコレートを握って…

「もっと、美味しいの買いたかったけど…お金、ないし…、手作りにしようかと、思ったけど…料理出来ないし…」

ルフィの涙がチョコレートに落ちる…

「これしか、用意出来てないっ。板チョコしか、おれ、渡せないっ…」




ゾロの温かな手が、チョコレートを、ルフィの手を、包み込む。






「ありがとう…ルフィ…」

ゾロがルフィの額にそっと口付ける…

「嬉しいよ、ありがとう…」


ルフィの小さな手の甲を撫でる


「どんなに高価なチョコを貰っても、どんなに美味いチョコを食べたとしても、俺にはルフィが一番なんだ…」

そっとルフィを抱き寄せ、小さな頭を撫でた。
ルフィはふるふると震えていて…

「ゾロが、すきだ…」
と呟いて…
「俺も、ルフィがすきだ。」
とゾロが返して…



ソファーにゾロが腰掛け、その膝にルフィが座る。

「ルフィ…」
ゾロが優しくルフィの耳元にキスをして…
「ルフィからのプレゼント…食べさせて?」
とチョコレートなんかより、もっと甘ったるい声で囁く。


その声だけでルフィは真っ赤になって…

そっと紙の包装を破ると、平らなチョコレートをパリンと小さく折る。

そして…

ゆっくりとゾロの口元にチョコレートを運ぶ。

ゾロの口へと招かれた、深いブラウンの甘いそれは、ゆっくりと舌の上で転がって…



「甘い…」
ゾロが小さく呟く。

「あ、ゾロ、チョコ嫌いだった?」
とルフィが困ったように眉を下げる。


ゾロはふっと微笑んで…
「美味いぞ、ありがとな。ルフィ…」

そっとルフィの額にキスを落とす。
「お前が選んでくれたのは、いつでも美味い。」


ルフィはくすぐったそうに
「よかった…」
とゾロの胸に頭を預けると
「おれにも、分けて?」
とクスリと笑う。



ゾロはそぅっとチョコレートを小さく割ると…

「はい、ルフィ…」

と不思議そうに見上げてくるルフィの唇を暖かな指でなぞり……

「甘いの、すきだろ?」

と欠片を自分でくわえ、にっと笑う。


一瞬、ルフィはぽかんとし、その意味が分かると顔を真っ赤に染めて……

「すきだっ!」

とゾロの唇へとかじりついた……








貴方に届くかな?

私に返事が届くかな?


チョコレートのハガキにしっかり

愛を込めて送ったのだけど……


貴方に届くかな?











/板チョコを敷き詰めてベットにしましょう?その上でふたりで眠りましょう?
09/01/25
(clap2011/04/20)




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