Beast



真珠の涙


キラキラ輝く海に
ホロリと落ちた人魚の涙…






輝く水面を見つめて、ふと、昔ナミが話してくれた人魚姫の物語を思い出す。
風がゆっくりと麦わら帽子を撫でて、潮の香りを残して消える。船が通る度に起こる白い泡を見て、何故だか悲しくなって…

抱き締めたくて堪らなくなった。




珍しくも船のヘリにもたれて、静かに波を眺める恋人の背中を見つめて。不思議なほどに愛おしくなった。
海風に煽られる黒髪がまるで誘うように揺れて…

抱き締めたくて堪らなかった。






「次の島はまだまだ先だぞ…ルフィ」

そっと抱き締められて、胸が跳ねる。
だって今、ゾロのことを考えていたから。愛おしくて堪らなくて涙が零れそうだったから。

「なぁ…ゾ、ロ…」
弱々しい声が漏れる。あまりにも小さくて、硝子みたいに割れてしまいそうな、そんな声。


きっと、俺が人魚姫だったなら…
きっと、きっと…


「俺も…泡に、なってる、よな…」

すきな人のために、静かに静かに。
ただ、その人を想って…彼女は泡になったんだろう。決して王子を傷つけることなど出来なくて、たくさんの涙を、美しい真珠のような涙を零して……


「何、言ってんだよ…」

と温かな声が耳元に響いて、うなじにチュとキスされて。




「お前は海賊王になるんだろ?」




まるで当たり前のようにそう尋ねられて。

「その隣には、世界一の大剣豪がいるだろう?」
と少しからかうように笑われて…


堪らなくなって、相手に抱き付いて小さく頷く。愛おしくて愛おしくて堪らない、そんな人に抱き締められて…


きっと泡になって消えるよりも、もっと先に、ゾロならおれを抱き締めてくれるのだろう。魔法のキスをして…


「お前がすきだ」


と大好きなあの声で、おれを包んでくれるんだろう。






流れた涙を集めて
ネックレスを作ったら

幸せの歌を口ずさんで?


ウエディングドレスの胸元に
そっと飾った真珠の……


あぁ…なんて美しいこと…










/もしも涙を流すなら、幸せの涙を流したい。そんな真珠の涙は、きっとキラキラ輝くから…
2010/11/01




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