Beast



不安


スリラーバーグを後にし、数日…。

「今日の夜食はなんだろうな〜」なんて呑気に考えていた風呂あがり、おれはいきなりゾロにキスされ、ソファーへと押し倒された。
顔の横には、日々鍛え上げられた筋肉質の腕が伸び、目の前にはゾロの顔。
「ゾ…ロ……?」
おれは不安になってゾロを見上げる。
ゾロは黙ったまま、おれの額にキスをおとす。いや、額だけじゃない。閉じた瞳、眉間、目尻から、頬、鼻、口角、また唇、そして首筋…
「ゾロ……ちょ、やめてっ…」
首筋から鎖骨、二の腕から指先。
指先に唇を落とすゾロの顔は、愛おしそうで、でも悲しそうで…。
「ごめん…ルフィ…」
呟くもゾロの唇はおれから離れない。こんな、切ないゾロの顔見るのなんて、今までなくって、不安で不安で、抵抗する事ができない。
いつの間にか着ていたTシャツは脱がされていた。キスはだんだん下がっていき、腰辺りに到達する。ゾロはおれをそっと抱き上げると、背中を向けるように座らされる。おれは背中越しにゾロの息を静かに感じる。

数日前まで、くまとの闘いの傷で眠っていたゾロ…。もしかしたら、ゾロは何かを知ってしまったのかも知れない。嫌なことを、辛いことを…。だから、おれが受け止めてやんなきゃダメなんだ。

そっとゾロの唇がおれの肩に落ちる。その後も背骨伝いにキスは伝い、おれの脊髄は時折ゾクゾクと体を震わせる。
ただのキス。 いつもと変わらないキス。吸い付くわけでも、噛みつくわけでもない。ただただ悲しげに触れるだけのキス。
全身キスされ、最後に耳に口づけ。その後、後ろからぎゅっと抱きしめられた。そして、おれの首筋に顔を埋めてくる。
「俺のだっ……」
「ん?」
おれは優しくゾロに問う。
「お前は俺のだ。だから、死ぬな…。」
ゾロの腕に力が入る。
「大切だから、死ぬなよ。おれは…モリヤと戦った後、ぶっ倒れたお前と、くまの姿が忘れられねぇ…お前に悪いが、不安なんだ。俺はお前には消えてほしくない…。命をかけてもお前を守りたかったんだ。」
おれはゾロの心音を背中に感じた。トクトクと血は流れ、ゾロが生きてるって実感できた。
「でも、お前はいつも俺より前を走りたがって飛び出しちまう。……不安で不安でしかたねぇんだ。」
ゾロらしくない、弱い言葉。「不安」…
「おれは死なねぇよ…。お前のそばにいるから…大丈夫…。」
おれはコトンとゾロの頭に自分の頭を傾ける。
「ちょっと前まで、ゾロの方が死にそうだったじゃんか……それなのに…ずりぃ。」
ホロリと涙が出た。
「おれだって不安だぞ…。ゾロは命を捨ててまで、おれを守ってくれようとするから…。」
ポロポロと涙は落ち、ゾロの腕も濡らす。
「そんなのいらねぇ…。どうせ、おれはゾロがいねぇと生きてけねぇんだ。だから、だから…」

と、いきなり体が180度回転して…ゾロにキスされた。今日一番の優しいキス…。

「ルフィ、一緒に生きよう…」

「うん……」

ただ居るだけ、そこにゾロが存在するだけで、おれは幸せだから……








/死んだらおしまい、愛もおしまい…生きているから不安なんだ…不安と幸せは比例する…
08/12/15


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