Beast



adagio

ゆるやかに流れた時は
過去の思い出……




昔のあの、流れる時間はあれほどまでに緩やかだったのに…

あぁ、どうして今のアイツは遠いんだろう

離れていくのが恐いのだろう…



2人で海を渡る日々が当たり前すぎて、まさか「2人だけ」がいとも簡単に終わってしまうとは思っていなかった。




ナミと手を組んで、ウソップが仲間になって、コックが船に乗れば、それから賑やかで騒がしい毎日になった。

別に仲間が嫌いな訳じゃない。

ある意味、アイツ同様に大切で…


でもアイツが一番だった…




なぁ、俺だけ見ろよ…

と心で囁いた


なぁ、その笑顔は俺のもんだろ?

と心が震えた




アイツはあまりにも無防備で優しすぎるから、いつでも俺は恐くなる。


あの時間が…
穏やかなあの時が……

まるで嘘だったんじゃないかと…






「ゾロ……」
背中から声がする。

「また甲板でひとりか?」
愛しい愛しいアイツの声……

ゆっくりと背中に柔らかな熱が触れて……
「寒いだろ?どうかしたのか?」


お前のせいだ。

なんて口が裂けても根性なしの俺は言えない。


それでも心配してくれる相手が嬉しくて、胸が張り裂けそうで…




「愛してる」
と抱き締めた。




アイツはキョトンとしたけれど、止めなかった。

止めたくなかった。


お前は俺のだ!
と叫びたかった……








ゆるやかな時間は昔の思い出…

今はただ…
激しく燃える馬鹿みたいな嫉妬ばかり……


愛してる


それだけなのに苦しくて……










/君とゆるやかに流れる時代に身をゆだねて……
(アダージョ:ゆるやかに)
2009/11/08


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