Beast



片手


すっかり冷え込む冬島。辺り一面、真っ白な雪化粧で、控えめな太陽も、雪に反射しキラキラ輝く。レンガ造りの建物が転々と並び、道の脇にはもみの木が並ぶ。まるで絵本の中に飛び込んだよう。

島の人に聞くと、ログが貯まるまで数日かかるらしく、今回は久しぶりの滞在。


「ゾロ、ゾロ〜!ほら、雪だるさん!」
宿屋の前の道で、ルフィは満面の笑みを作った。彼の周りにはたくさんの雪だるま。
「あのな、そんなに作ってどうするんだ…」
やれやれ、と額を抑えゾロはルフィに近付くと、ルフィの頬に手を触れ
「寒くないか…?」
と尋ねる。ルフィが部屋を出てから、もう二時間は経つ。だから、様子を見るためにゾロはやってきたのだ。
「ん〜耳がさみぃな!」
と、笑いながらルフィは言う。キラキラ光る瞳には、ゾロの心配そうな顔が映っていて
「耳当ては?」
「あれっ!」
とルフィが指差すほうを見て、ゾロは呆れたように呟く。
「あいつは寒くていいだろ?」
と1体の雪だるまに近づく。
「で、マフラーもか?」
とその隣に立つ雪だるまの首に巻かれたマフラーをはずす。
「は、外すな!!」
とルフィは慌ててゾロの元に走る。
「こいつらは兄弟なんだ!!」
と並ぶ3体の雪だるまを指差し言う。
「このマフラーのと耳当てのと手袋のがか?」
ゾロはマフラーをはずす手をとめ、ルフィを見る。そしてため息を1つ。
「お前なぁ〜…」
と自分のマフラーをはずすとルフィの首にふわっと巻いてやり、手袋は左手だけルフィに渡す。そして、ルフィの右手をぎゅっと握ってやる。
「ゾロ…?」
「寒いだろ?なんか飲みに行く…。」
と相手の手を引き、街へと歩き出す。
首元のマフラーより、片手だけの手袋なんかより、繋いだ手は暖かい。

あぁ…また雪が降り出した…








/片手で伝わる、体温、想い…
08/12/15


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