Beast



はつゆめ


「いちふじ、にたか、さんなすび。」
ルフィはゆっくり唱える。

「いちふじ、にたか、さんなすび。」
ルフィは人差し指をくるくる回す。

「いちふじ、にたか、さんなすび。」
ルフィは寝ているゾロの横。

「いちふじ、にたか、さんなすび。」


ゾロは今日も変わらず昼寝をしていて。甲板は寒いから、とルフィは毛布をそっとかけてやる。
ちらっと覗いた寝顔はやっぱり大好きないつものゾロで。あんまり気持ちよさそうだから、さっきウソップに教わったことを試してみたくなったのだ。


「いちふじ、にたか、さんなすび。」
ルフィは寝ているゾロの顔の前で人差し指をくるくる回す。

お正月、夢見る人への幸せの呪文。

もう一度。
「いちふじ、にたか、さんなすび。」
一番に高い山。二番に強い鳥。三番に鮮やかな野菜。ゾロが夢で出逢えますように。そして、幸せになれますように…。


ルフィは一生懸命、呪文を唱える。
だんだん体が冷え始める。

「いちふじ、にたか、さんなすび……」
ふと指を止め、ゆっくりと呼吸するゾロの顔を覗き込む。

そして、

「あと…」
ゾロの前髪をそっとのけ…


「おれの夢も見てください…。」


静かに額にキスを落とす。
瞳をそっと閉じて、冷えてしまった額に熱を宿す。


「よし、じゃあ部屋戻るな?」
と寝ているゾロに一声かけると、ルフィはぱっと立ち上がる。

と、急に腕を掴まれルフィはストンとゾロの上へ倒れる。

「いちふじ、にたか、さんなすび?」
ゾロがルフィを見て笑う。

ルフィの顔は真っ赤。

「一緒に見ねぇ?」
ゾロは毛布を捲ると尋ねる。
「何を?」
ルフィはパチパチと瞬く。


「はつゆめ。」


「馬鹿だなー、はつゆめは今日の晩みるんだぞっ!」
「じゃあ予行練習は?」
ゾロが意地悪く笑い、ルフィの頬を撫でる。


「はつゆめの?」

「はつゆめの。」


ルフィは毛布に潜り込み
「晩も一緒に見ような?」
と、にっこり笑う。

ゾロはそんなルフィに
「いちふじ、にたか、さんなすび。」
と呪文を唱え


「もちろん俺は、必須な?」
とそっとキスを落とすのだった。









/はつゆめ、みたよ。あったよ、あなたに。
09/01/01
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