Beast



赤ちゃん*

※R15(言葉が出てくるだけですが一応…)



普段と変わらず、俺の奥さんは玄関で潤んだ瞳で俺を見上げる。




「やっぱり、やだっ」
ルフィがゾロのコートの袖をぎゅっと握る。
「今日、お仕事お休みしてっ!」

涙のたまった瞳に見つめられ、ゾロは困ったようにルフィを見る。
「あのな、ルフィ…。俺だって、ルフィと一緒にいたいけど、仕事行かねぇと…。昨日も言っただろ?」

「だって、結婚したのにっ…。ゾロと一緒がいいっ」
と袖を引っ張ると、ゾロの腕を引き寄せしがみつく。
「お休みしてっ」


可愛いルフィを見ていれば、仕事なんて止めてしまおうかと、本気で悩むゾロだが、何しろ2人で暮らすには、それだけお金がいるもので……


「土曜日、ずっと一緒にいてやるから、な?」
「やだっ」

「じゃあ、土日に温泉は?…な?」
「温泉は行くけど、今は離さないっ」


毎日毎日、玄関でこの繰り返し。


愛してくれているのはわかるが、仕事に行けないのは、少し困る。


「じゃあ、おれも一緒に行くっ」
とルフィがゾロの腕に顔をうずめる。

「あのなぁ…ルフィ…」

「じゃあ、おれが風邪ひいたら?」
「ルフィ、」

「じゃあ、台風来たらお休みしてくれる?」
「ルフィ……」


ゾロがルフィの肩を掴みそっと自分から引き離す。

「あのな、ルフィ…」


「じゃあ…」

ルフィがゾロのコートを両手でぎゅっと握り、ゾロを大きな瞳で見上げる。


「おれが妊娠したらっ?」


「に、妊娠っ!?」
先程まで、困ったようにルフィを見つめていたゾロが驚いたように、聞き返す。

「うん、妊娠したら、ゾロ産休とれる?」
ルフィがゾロに抱きつき問う。


ゾロが働く職場は、大変制度が整っていて、奥さんが妊娠すれば、男性も1ヶ月ほどの「産休」が与えられる。


そういえば、産休なんてあったなぁ…

なんてぼーっとしながら、ゾロはルフィに
「あぁ、とれる。」
と簡単に答えた。


その言葉に、ルフィの表情がばぁっと明るくなる。

「ホント?お休みとれるのっ?」

ゾロはしまった、と思ったが、ルフィはゾロに産休をとらせる気満々。


「でも、ルフィ…。妊娠なんてしてないだろ?」
とゾロは少し不安げに尋ねる。

「うんっ、まだ。」
ルフィが、自分のお腹の下の方をくるくると撫でる。


「でも、おれ、がんばるからなっ」
とゾロを見上げ


「ゾロとの赤ちゃんっ」

とにっこりと微笑む…






ルフィは全くと言っていいほど、性についての知識がない。
ゾロとエッチするまで「自慰」という行為さえ知らなかったのだ。
そんな無知な彼が「妊娠」……


俺はどうすればいいんだよっ!

ゾロは内心焦りながら、ルフィに問う。
「ルフィ?妊娠ってどんなことだか知ってんのか?」

ルフィはにこにこと笑ってゾロに答える。
「うん。すきな人と一緒にがんばってするんだろ?で、お腹が膨らんで、赤ちゃんが産まれるんだっ!」


キラキラ輝く笑顔に、ゾロがもう1つ質問…
「すきな人と一緒に、何をがんばんの?」

ルフィは人差し指を形の良い顎につけ、う〜んと唸る。
そして丸い瞳でゾロを見つめ…


「それはゾロが教えて?」

なんて可愛く見上げられれば、ゾロは困って頭をかく。


結局、全然知らねぇんじゃねぇかよ…

と心の中でぼやき、可愛い恋人に不意打ちでキスを喰らわせる。




急のキスに驚くルフィの耳元で、ゾロが甘く、濡れた声で呟く…




「エッチ……」




ルフィの顔が、ぼっと赤くなる。
「え、エッチぃ?」

「うん、2人でがんばってエッチすんの。」
ゾロがルフィの背中を優しく撫でる。

「ん…」
それだけでルフィは肩を震わせ…




「で、もっ…エッチならいっぱい…」
ルフィは恥ずかしそうに、潤ませた瞳をゾロに向ける。


女じゃないと、なんて一生懸命なルフィに、ゾロはどうしても言えなくて……


「ひとつの命がそんなに簡単に出来るかよ」
と誤魔化してみる。




「じゃあ…」
ルフィがそっと睫を震わせて


「これからも、いっぱいしたら出来るかな?ゾロとの赤ちゃん…」


なんて愛する瞳で見つめられれば…

ゾロには我慢できなくて……




「出来るっ!」
とルフィをぎゅっと抱きしめた。


そして、柔らかな頬にキスを落とすのだ








「わかった?」
とゾロがルフィの頭を優しくなでる。

「うんっ」
とルフィは可愛く頷いて…

「赤ちゃんが産まれたら、家でずっといなきゃいけないもんね。」
ルフィが微笑む。

「あぁ、だからその練習…」
とゾロがルフィの頭に手を添えそっとキスする。


「じゃあ、行ってくるな…」
ゾロがルフィの頭をくしゃりと撫でる。

「あの、さ…」
ルフィが恥ずかしそうに俯いて…


「次の土日は、温泉行こうね?」

とゾロを見上げる。


ゾロはふっと笑うと
「もちろん。」
とルフィの頬を撫で……


「がんばろうな…」


甘く甘く囁いて…

優しいキスを落とすのだ……








たとえ嘘だとしても…

俺は信じるよ……




お前との愛と奇跡を………










/貴方との赤ちゃんが産まれたら、嫉妬してしまうかしら?だってね、きっとかわいいもの。
09/01/12


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