食べてしまいたい
クリスマスも、お正月も、もう終わり…
次のパーティーはずっと先…
「パーティー…したいな…」
ルフィは段ボール箱をガサゴソ漁る。
きらきらの三角帽子に、ヒゲ眼鏡。余ったクラッカーに、たくさんのコスチューム…。
「あ、これっ」
ある物を取り出して、頭に被る。
にしし♪と可愛く笑うと、段ボール箱をそっと閉め、ゾロの元へ向かう。
「ゾロっ」
男部屋を覗くが、ゾロの姿はない。
「ゾロ〜」
浴室にも、リビングにも、いない。
と、いうことは…
「トレーニングルーム?」
ルフィは少し寂しそうにソファーに座る。
足を抱えて、三角座り。
トレーニング中は邪魔しない!
それがゾロとの約束だから…
「早く帰ってこないかなぁ…」
唇を尖らし、時計に目をやる。
9時前。
ゾロは、トレーニングが終われば、いつもシャワーを浴びる。
きっとリビングを通って、着替えを取りに行くはずなのだ。
「待ち伏せだっ」
ルフィは嬉しそうに笑うとソファーの上から窓の外を眺める。
きらきらと星が瞬く。
まるでパンっと割れたクラッカーのようで…
ルフィはぼんやりと夜空を見つめた。
いつも以上にトレーニングが長引いた。
近頃はパーティー続きで体が鈍っていたから。
シャワーを浴びようとリビングへ向かう。
いつもは暗いリビングからは、なぜか光が洩れていて。
そっと扉を開け、中へ入ると、ソファーの上には、すーすー寝息を洩らす、ルフィ。
きゅっと体を丸めている。
その頭には…
可愛いキノコ型の帽子。
「まだパーティー気分か?」
とふっと微笑んで、ふんわり柔らかな頬にキスを落とす。
「風邪ひくぞ?」
とそっと抱き上げる。
「…ゾロっ?」
「あ、起きた?」
ルフィが瞳をゴシゴシ擦る。
「トレーニング終わった?」
「あぁ」
とゾロはゆっくりルフィをソファーの上に降ろす。
「待ってたのか?」
と頬を優しく撫でてやる。
「うんっ」
ルフィがコクリと頷く。
キノコの帽子がふわんと揺れる。
「ゾロ、パーティーしよう?」
ルフィがゾロを見上げる。
先ほどまで眠そうだった瞳がパッと開く。
「2人だけのパーティー…、だめ?」
ゾロは静かに笑って尋ねる。
「そのためのキノコ?」
そっと帽子のズレを直してやる。
「うん!」
ルフィがにっこり笑う。
「だって…」
帽子が落ちないように両手で押さえると
「ゾロが可愛いって言ってくれたからっ」
ルフィの顔がぽうっと赤くなる。
ゾロも優しくほほえんでルフィを見る。
「今日のルフィも、最高に可愛い…」
ちゅっと口付け。
優しく柔らかなキス…
「ゾロ、パーティー…」
ルフィがゾロを見上げる。
ゾロはふっと笑って、耳元で囁く。
「一緒にお風呂入って、お祝いしよっか?」
甘い囁きにふるりと震え、ルフィが熱っぽい声で尋ねる…
「なんの、お祝い…?」
「ルフィが最高に可愛い夜のお祝い…」
とゾロはルフィをギュッと抱きしめる。
ルフィが恥ずかしそうに笑って、ゾロの首に腕を回す。そしてねだる…
「早く、お風呂っ」
「はいはい」
と額にキスを落とし、ゾロはそのまま、ルフィを抱き上げる。
なんて可愛いのだろう…
なんて愛おしいのだろう……
食べてしまいたいぐらいに
愛してるって思うのは…………
もしかして、そのキノコの魔法……?
/キノコの帽子をかぶった君に、食べてしまいたいと、深いキスを落とすのだ。
09/01/06
(佐倉和様「キノコ」)
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