Beast



身長*


寒い寒い冬の、学校からの帰り道。

「帰ろっか、ルフィ。」
冷たい風が吹く。
ゾロがルフィの手をぎゅっと握る。

「うんっ」
ルフィもしっかりとゾロの手を握りかえす。


ルフィは高校一年生。ゾロは高校三年生。

本当なら受験で忙しいはずのゾロだが、昔から続けてきた剣道で全国優勝。あっさり推薦で大学が決まってしまったのだ。

そのおかげで、ルフィは毎日ゾロと一緒。

「今日はいいことあった?」
ゾロがルフィに優しく尋ねる。

「えっとな…え〜っとぉ」
ルフィの考える顔を見、ゾロがふっと笑う。

そして、もう一度尋ねる。
「いつも通り?」

「うんっ、いつも通り!」
ルフィがにっこり笑う。


「いつも通り、ゾロのこといっぱい考えてたぞっ!」
と可愛い笑顔を輝かせ、髪をサラサラと揺らす。

「おう、ありがと。」
ゾロも笑って、くしゃりとルフィの頭を撫でてやる。

「ゾロは?」
ルフィのまん丸の瞳がゾロを見つめる。

「ゾロも俺のこと考えてた?」
吸い込むような真っ黒な瞳がゾロを映す。

「あぁ、ずっとな。」
ゾロがにっと笑うと、ルフィが嬉しそうにまた微笑む。

帰り道。2人だけの甘い時間。




いつもの公園で、いつものベンチに腰掛ける。
紙コップの自販機があり、いつも通りのホットココアとコーヒーを買う。
ゾロの奢りは今日特別…。

「寒くないか?」
ゾロはルフィのマフラーを直してやりながら尋ねる。

「大丈夫っ」
ルフィはココアをそーっとそーっと飲む。

そして…
「あちっ」
とぺろっと舌を出す。

「ゆっくり飲めよ?」
とゾロが笑う。


風に揺られる小さなブランコ…
崩れかけたお山のある砂場……
綺麗な夕焼けに照らされキラキラ反射するすべり台…

誰もいない静かな公園……

いつも通り、何にも変わらない。




なのに、なのに…

邪魔する奴がきて……




「あのっ…ゾロ先輩」
高くて綺麗な声がする。
ルフィも見覚えのある二年生の女子。
ふわりと短いスカートにくるくる巻かれた綺麗な髪が揺れる。
頬を火照らし、ゾロを見つめる瞳は熱っぽい。
「ちょっと…いいですか?」
パチパチと長い睫を瞬かせる。


何も知らないゾロは
「ん、あぁ…」
とゆっくり立ち上がる。


そして、その少女の方へ……


「やだっ、ゾロ!」
ルフィはゾロのコートを引っ張る。


おれにはわかる。
きっとこの子、告白するんだ。
今学期になって、もう7人目…。


「…ルフィ?」
ゾロがルフィを見る。

「行っちゃやだ。」
ルフィはぎゅっとゾロの腕を掴む。


少女の手がゾロにのびる…
「ゾロ先輩、こんな子ほっといてっ…きゃっ!」


少女にルフィのココアがかかる。
そして紙コップもポンと投げつけられる。

「ゾロはおれのだっ!」
ルフィは涙目で少女を睨む。

ゾロの腕を引き寄せ、背中からぎゅっと抱きつく
「ゾロはおれのっ」
もう一度、小さく呟く。


少女は鞄からハンドタオルを取り出し、ココアをふくと、
「ねぇ、変な後輩はほっといて、行きましょう。」
とゾロの手を取る。


ルフィは何も言わず、ゾロにギュッと抱きつく。


行かないで…
おれだけのゾロがいいっ




くるりとルフィの視界が回ると、ギュッとゾロに抱きしめられた。


「悪いけど…」
ゾロがじっと少女を見る。


「…ゾロ?」


「可愛い恋人おいてはいけねぇわ」
とにっと笑う。


そして、ルフィにキス…
甘くて優しいキス……


どこにも行かねぇよ…
バーカっ


優しくゾロはルフィの頭を撫でる。






「ほいっ」
本日二回目のホットココアがルフィに手渡される。
「ありがとっ」
ルフィが微笑む。


「バレちまったな…」
とルフィの隣に腰掛け、ゾロが小さく呟く。


ふぅーとココアに息をかけ
「ん?」
とルフィが小首を傾げる。


「俺たちの関係…」


その言葉を聞いてルフィがぼっと赤くなる。
「だって、ゾロが急にぎゅっとして、き、キスするからっ」

唇を尖らせてゾロを見る。

「まぁ…」
ゾロがルフィの頬にそっと手をやり

「本当のことだし、いいけどな。」
と唇を甘く奪う。


唇が離れると


「また…」
とルフィが呟く。

「学校にバレたら、からかわれんだろっ」
と言いつつ、ゾロに抱きつく。

「でも、俺には関係ないしな。」
ゾロがルフィの髪をときながら笑う。


するとルフィがキュッとゾロに回した腕に力を入れ…

「そ……、…から?」
消えそうな声で、小さく呟く。

「ん?」


ルフィはゾロの首筋に顔をうずめる。


「卒業、しちゃう、から…?」


ルフィの声はいつもより寂しそう。
腕はしっかりとゾロに抱きつき、離さない。


しばらくじっとし…
そして……

「違うよ。」
とゾロがルフィの腕をそっと離す。


そしてしっかりと真っ黒な瞳を見つめて…




「周りなんて関係ないって思えるほど、ルフィのこと愛してるから。」




「こんな理由じゃ不満?」
と意地悪く笑う。

ルフィの顔は嬉しそうに輝いて
「満足だっ」
とゾロの鼻にちゅと口付ける。








冬の空気に体が冷える。
ただ繋がれた手だけは妙に温かくて…

2人はゆっくり家路を急ぐ。

「俺が卒業すんの、そんなに嫌?」
ゾロがルフィの手を握り、尋ねる。

「うん、やだっ」
ルフィはぎゅっと繋いでいる掌に力を入れる。


「離れ離れは、やだ…」
とゆっくり歩いていた足を止める。


「どうした?」
ルフィを振り返り尋ねる。

もちろん、手は繋いだまま。


「帰りたくないっ」


ルフィはゾロを見上げる。

こういう時だけ、いつも、ゾロの身長が、すごく高く感じられて…


「ゾロと離れたくないっ」
「ルフィ…?」
冬の冷たい風が2人の頬を撫でる。


「一緒がいい…」
ルフィが静かに呟く。
まるで風に揺られ散る、枯れ葉のように、寂しく、弱く。




ふっと腕が引かれ、ばふっと倒れ込むとゾロの温かな腕の中で…


「毎日、迎えにきてやるから…」
聞こえるのは、低く優しい声…

「毎週、遊びに連れてってやるから…」
甘くて、すこし寂しげな…

「いつでも、家にきていいから…」
いつものゾロの声…。


「あんまり、可愛いことばっか言うなよな…。卒業出来ねぇだろ…バカ。」




しばらく2人で熱を分け合う…


誰に見られたって気にしない。
街灯の明かりと薄い月が、ただ、2人を照らす……




「同棲する…?」


なんて、ゾロが耳元で囁いたりするもんだから、ルフィは甘く身震いする。

「どう、せい…?」
ルフィはゾロの胸で小さく、その言葉を繰り返す。

「一緒に暮らそう、ルフィ…」
甘く甘く囁く。

「お前の兄貴にもちゃんと言って、一緒に暮らそう…」
優しくルフィの背中を撫でて、自分の首筋にうずくまる、愛しい相手の名前を呼ぶ。

「ルフィ…」


「ずっと一緒?」
小さく尋ねる可愛い声。

「ずっと一緒。」
優しく答える甘い声。


「ずっと…?」
ルフィは顔を上げるとゾロを見つめる。


「おはようも、いただきますも…?歯磨きも、着替えも、いってきますも、ただいまも?お風呂も、おやすみも…」


「一緒。」

ゾロが微笑む。


「一生、お前と一緒。」




静かに口付けして、抱きしめ合う。
ただ愛しくて、ただ一緒にいたくて…


呟く…

甘く甘く、溶けるように…




愛してる…










/あなたの高い身長に、いつになったら追いつけるの?
09/01/05
(ハル様「年の差」)


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