Beast



おめでとう


「…ゾロ?」

振り返るとそこには、大きなケーキを持ったルフィがいて…

「お祝いしようぜっ」
なんて、可愛く微笑むから…


「あぁ…」

俺もいつも通りにルフィを手招きし…

「Happy New Year…だな?」
なんて笑顔を向けてやったのに…


ルフィときたら…






ただただ、お祝いしてやりたくてサンジに朝からケーキを焼いてくれ、と頼んだ。

祝ってやりたいんだ。大好きなやつと…。
出来上がったケーキは大きくて美味そう。

もう、2人きりになれる夜が待ち遠しい。
聞いて欲しい話がたくさんあるから。






夜になった。もう夜明けが近いのかもしれない。
先ほどまで賑やかだった船内に吐息が零れる。みんなスヤスヤ夢の中…


「お祝い」のためか、今夜はあまり飲んでいないルフィはみんなが寝てしまったあと、ケーキを抱えて甲板に出る。


ヒンヤリと冷たい空気をまとい、ゾロが酒を飲んでいる。


月光に照らされる彼を見、格好いいな…なんて、少しぼーっとする。


そして静かに彼の名を呼ぶ。


「…ゾロ?」

ふと振り返ったゾロは、静かにルフィを見つめる。
「なんだ?」


「お祝いしようぜっ」
とルフィはケーキを抱えてにっこり笑う。


月明かりに浮かぶルフィの笑顔は、それはそれは綺麗で、可愛いな…と少しぼーっとしてしまい…


ゾロはルフィの抱えるケーキをそっと床に置いてやる。

そして、その前にどかりと座る。

「Happy New Year…か?」
と自然に笑みが洩れる。


でも…ルフィはキョトンとして…

「違うぞ?」

とゾロの横で彼を見上げる。


「じゃあ、一体なんの…?」

ゾロはケーキに目をやる。


ーHappy Birthday!ー


チョコレートには綺麗にそう書かれていて…




「エースの誕生日なんだっ、今日!」

とルフィは嬉しそうに笑う。


その笑顔を見、なぜかゾロは不機嫌そう。


「どうしたんだ?」
と覗き込んでくるルフィに一言。


「いやだ…」


「へっ?」
とルフィは間抜けな声を上げる。


「兄貴の誕生日なら、1人で祝えよ。」
とゾロはすっと立ち上がる。



嫌なんだよ…たとえ、お前の兄貴だとしても、他の男に笑顔を向けてるお前を見んのは…



そして、そのまま扉まで振り返らずにズンズン進む。





すると聞こえる微かな声。


「…なの、………だ」


「…?」
ゾロがドアノブに手をかけ、静止する。


「そんなの、いやだっ!」


ケーキの前でぺたんと座る、ルフィの顔は俯いているせいで、見えない。


「そんな、自分勝手なこと…」
「やだ、ゾロと祝うっ!」
ゾロの言葉を遮ってルフィが言う。

「お前な…」
「一緒に祝うって決めてたんだっ!」


ゾロは無言でルフィへと近づく。

そして……




ガバッと絹の擦れる音…


「俺の気持ちも考えろよ!」


とゾロがルフィの胸倉を掴む。




「……い、でも……か?」

ゾロの拳に冷たい何かが落ちる。


「船長命令でも…だめ、か?」


ゾロを見つめるルフィはポロポロ泣いていて…

「ルフィ…?」
ゾロは驚いてルフィを見る。




「好きな奴と、兄ちゃん、の誕生日、祝っちゃ、だめ、か?」


ルフィはぎゅっとゾロに抱きつく。




ゾロは呆然とする。


なんて俺は馬鹿なんだろう…
コイツだって不安なのに…
兄貴と離れ離れで、ずっと心細かっただろうに……
俺は、なぜ、船長を…ルフィを…愛する人を泣かせるんだ……?




優しく響く甘い声。

「祝おう…」

ゾロがルフィをぎゅっと抱きしめる。
「ごめん」の気持ちと「愛してる」の気持ちを込めて…


「…ゾロ?」
ルフィが驚いたように静かに名を呼ぶ。


「船長…命令だろ?」
照れ隠しに笑ってみる。


一瞬、キョトンとし
「うんっ」
とルフィは明るく頷き、笑う。


そして…
「仲直りのちゅー…は?」
とゾロを見上げる。


「はいはい。」






月明かりが2人を照らす。




こんなに幸せでごめんなさい…
と、代わりにロウソクを吹き消して…










/ねぇ、この空で繋がっているなら、どうか、お月さま。おめでとうの気持ちと、私たちの幸せをのせて、あの人に…
09/01/04


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