Beast



寝グセ


「おい、ルフィ!じっとしとけって!」
「い〜や〜だっ!」
忙しい朝、洗面台の前でサンジとルフィの追いかけっこ。

「どうかしたのか?サンジ?」
と眠そうな顔のウソップが尋ねる。そして欠伸をひとつ。
「寝グセだよ!見てみろ、ルフィのあの頭を!」
サンジはイライラしたようにルフィの頭を指す。ウソップはサンジの指さす方を見てやれやれと肩をすくめ尋ねる。
「ルフィ、昨日、髪濡れたまま寝ただろ?」
「うん。眠かったから、そのまま寝たんだ、おれは!」
ウソップの問いかけに答えるルフィの頭は、確かに凄い寝グセがついている。前髪が完全に上がってしまって綺麗なおでこが丸見え。

「ルフィのことだし、ほっときゃいいだろ。」
呆れたように言うウソップに
「気になるんだ!紳士として!」
とサンジはキッパリと言い張る。まぁサンジのポリシーみたいなもんだろうなぁ…とウソップもなんとなく納得してしまう。
それでも相手は自由奔放の麦わらの船長なわけで…
「絶対やだぞ!」
とサンジに向かってべっと舌を出す。
「何をこのクソゴム!さっさと来やがれ!」
とサンジはブラシを片手にまた追いかける。

しばらく2人をじーっと眺めていたウソップだが何を思ったか、サンジを呼び止める。呼び止められたサンジはといえば、眉間に皺を寄せ、嫌そうな顔。明らかに苛立っている。
そんなサンジに向かって
「オレ様に任せとけって。」
と親指で自分を指し、ニヤリと笑う彼の顔は自信に満ちていて
「秘策でもあんのか?」
とサンジの表情も少し和らぐ。
「まぁな。」
とウソップはサンジにウィンクするとルフィに近付く。

「なぁルフィ、オレもその髪型には賛成だ。すげぇイカしてるからなっ!」
「そーだろ!やっぱウソップ話がわかるなぁ!」
ウソップにのせられ、ルフィは嬉しそうにニコニコと笑う。
「そうさ、サンジだってホントはひがんでんだぜ、きっと。」
ウソップはルフィの肩に腕を回し、秘密話をするようにサンジを指し言う。そして…
「でもなぁ…」
と明らかに残念そうな声で肩を落とす。
「ど、どうかしたのか?ウソップ。」
とルフィは心配そうにウソップの顔を覗き込む。
「それがなぁ…」
「うんうん。」
ウソップは寝グセのルフィをじっと見つめ…

「ゾロは寝グセが嫌いなんだ!」

その言葉を聞き、ルフィの瞳がパッと開く。
「ほ、ほんとか!?」
明らかに騙されている。
「ほんとに髪の毛ピョンピョンしてるの嫌いなのか!?」
と焦ったようにウソップを見つめる。吸い込むような真っ黒な瞳に見つめられ、ウソップは困ったように目をそらすと
「な…なぁ、サンジ?」
とサンジに助けを求める。
「あぁ、そうだぞ、ルフィ。」
サンジもウソップに合わせ、こっくり頷く。

「で、でもっ」
「ほら、直すぞ。」
未だ抵抗しようとするルフィの腕をサンジが引っ張る。
「やだっ!」
泣きそうな瞳で見上げるがサンジの紳士道は曲げられないらしい。
「な、ルフィ。いつも通りにしてくれるっていってんだし…。」
ウソップもあたふたとサンジに加勢する。
「やだ〜!」
それでもルフィはブンブンと手を振り回し抵抗する。

と、そこへ…
「何やってんだ、朝っぱらから。」
洗面所のドアが開き、やってきたのは面倒臭そうな顔をしたゾロ。
サンジとウソップはその場に停止し、ルフィは頭を抑えてしゃがみ込む。
その様子を見、ゾロはルフィの前にしゃがむと
「どうした?」
と心配そうに尋ねる。いつもと違う雰囲気のゾロに、あとの2人は少し驚くがその様子を黙って見守る。
「見ちゃダメだ。」
とルフィは一言呟く。
「なんで?」
とゾロは、添えられているルフィの手の上から小さな頭を、そっと撫でてやる。
「俺はお前の顔、見たいんだけど?」
優しくて温かい言葉に、ルフィはゆっくりと顔を上げる。瞳は不安そうに揺れて目の前のゾロを映す。
「嫌いになんない?」
小さな言葉でそっと尋ねる。
「なんで?」
ゾロもそっと返す。
そしてルフィがボソリ。
「寝グセ…。」


とたんにゾロは大笑い。
ぼかんとするルフィを見、笑うのを止めると
「寝グセのルフィも可愛くて好きだぞ。」
と相手を見つめる。
「ほ、ほんとか?怒ってない?」
ルフィは驚いたように尋ねる。
「あぁ、本当に。」
ゾロはルフィを優しく抱きしめる。
「今日な、起きたらな、前髪がゾロみたいになってて、ゾロに見せてやりたかったんだ!」
キラキラとした笑顔を取り戻し、ルフィはゾロの首筋に顔をうずめる。
「そうか。ちゃんと見たぞ。」
とゾロはぽんぽんとルフィの背を叩く。
「でもな、サンジが直せって。」
とルフィは顔を曇らせる。

ゾロはちらりと、今の状況に困っている2人を見るとルフィに告げる。
「寝グセのルフィも好きだけど、今日は直してもらえ…。」
困ったように話すゾロに、焦ったようにルフィが尋ねる。
「や、やっぱり、ゾロ、寝グセ嫌いなのかっ?」

そんなルフィのおでこに甘いキスを落とすとゾロは一言…

「ルフィの額は俺のもんだろ?ちゃんとしまっとけ。」

そして、ぽんぽんとルフィの頭を撫でると2人には構うことなく、洗面所から出て行った。


サンジとウソップはただただ、嬉しそうに微笑むルフィと、去っていくゾロの背中を見つめて溜め息をついた。




お前の額は俺のもの…………ねぇ?










/寝グセで見える額でさえ、誰にも見せたくないんだ。それほど依存してる俺も俺だけど。
08/12/31


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