Beast



短い手紙*

(高校生ZL)





そっと繋いだその手が
ただ、愛しくて。




拍手の中、終わった卒業式。
記念品の贈呈やら、クラスでの写真撮影、恩師への御礼。全てを終えて、帰宅しようと人の少ない廊下を抜け靴箱に向かえば、玄関に見知った人影。
「…ルフィ!」
さらりと揺れる黒髪に、ポロポロと涙を落とす大きな瞳。冷たい空気に真っ赤になった頬を撫でようと近付けば、ぎゅうぎゅうと細い腕が俺を捕らえた。
「やだ!ゾロが、卒業、なんて…絶対、いやだぁ!」
なんて、愛しい声で告げられれば、どうしたものかと小さな背中をそっと撫でた。
俺の胸に顔を埋める可愛い可愛い恋人の身体は小さくて、子供のように温かで。嗚呼、なんて幼いんだろう、と俺は小さく苦笑した。

「ルフィ、顔見せろ。」
そっと濡れた頬を撫でて瞳を合わせば、不安げな真っ黒な瞳に俺が映って。俺だって泣きたいほどに寂しいよ、そう心で囁いた。
胸元に挿したままだった花を手に取って、ふわりと黒髪と共に耳に掛ければ、ルフィの瞳が静かに閉じて

「愛してる。」

そう2人で呟いて、高校最後のキスをした。






黒髪に栄える白い花。

それはまるで
初めて恋人と見上げた
帰り道の桜のようで。

それはまるで
思い出の最後を飾る
恋人からの手紙のようで。




俺の瞳は
何故だか濡れた。










2013/03/03
/最後に差し出されたのは、ノートの切れ端に書いた短い手紙。今までありがとう、そしておめでとう。




*

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