Beast



あなたの可愛い吹き出物*

(新婚さんZL)



白いほっぺの真ん中に
陣取った大きなおできは
真っ赤な顔して俺を嘲笑う




ある朝起きたら、何故だか嬉しそうにルフィが俺に飛び付いて、頬に出来た真っ赤に熟れた吹き出物を指差した。

「ほら、見て!ゾロ!朝起きたら、ほっぺたに可愛いボタンが出来てたっ」

そんな風に愛らしい笑みを向けられたら、頷くことしか出来ないだろう。
「おお、そうか。」
皺のよった寝間着のまま、寝癖でぴょんぴょんと跳ねた黒髪をよしよしと撫でて、大きなニキビにちゅっとキスをしてやれば、余りに幸せそうに笑うから。どうしたもんだ、と俺は考えた。
そういや、最近ルフィが喜ぶからと暴食を許しすぎてしまったらしい。正月気分の名残と相まって、最近はピザやらポテト、ハンバーガーなどばかりを強請っては頬張っていた奥さんの可愛いお顔を思い出して。俺はにやける口元を締めて、これからはルフィのために心を鬼にしなければ、と意志を固めるも、嬉しげにニキビをつつくルフィに溢れる愛が抑えられずに、堪らず強く抱き締めていた。


「今日から肉は我慢な。」
こんなニキビ1つ。ルフィの回復力をもってすれば、一週間も待たずになくなってしまうだろう。
真っ白な頬にぷっくり膨らむ、愛しい人のニキビさえも愛しい、なんて当たり前だけれど。度を超した暴食を許してしまった自らに反省もしているわけで。
勿論、肉を我慢すると言ったって、少し量を減らすだけ。食事の時間のあの可愛い笑顔を奪うつもりは毛頭ないのだ。

なのに、予想通りに不服げに尖らせた唇に、啄むだけのキスをして、
「このボタンが消えるまでだけだぞ?」
と頬の赤い吹き出物をちょんとつつけば、

「“ぽっちり”は、ずっとおれと一緒にいるんだ!」
なんて、ぷうっと柔らかな頬が膨らんで。


頬にやってきた、独りぼっちのぽっちりは、俺の大切な人にとっては、可愛いペットのようなものらしく。餌は何だろう?お菓子はすきかな?なんて、俺のパソコンを弄るものだから、仕方ないなと俺は溜め息をついて、パソコンの電源をぷちりと切った。



別に嫉妬なんてしていない。断じて!
こんな、2日やそこらで消えてしまうような吹き出物なんか、旦那様である俺に叶うはずないのだ。


そう言い聞かせつつ、携帯電話の繋がる先は、ルフィの友達であり、主治医であるトナカイで。

「まぁ、吹き出物は身体の異常を知らせてくれるものでもあるし、あんまり酷いなら相談に乗るけど…ルフィの肌なら大丈夫だよ。多分、3日もあれば気にならなくなると思う。」
チョッパーが、心配しすぎだよ、と苦笑したのを聞いてほっと胸を撫で下ろしたのも、束の間。

「ただし…」






寝室の引き出しに入れたままだった、カラフルな缶を開けて、中から取り出したのはウソップ特製“そげキングバンド”!まぁ、簡単に言ってしまえば、そげキングのイラストが入っただけのただの絆創膏である。

最終手段だ、とばかりに“そげキングバンド”を握り締め、ルフィを抱き寄せて、
「今、チョッパーに聞いたんだが…ぽっちりはヒーローがすきらしいんだ。」
出来るだけ優しく、甘い声で、嘘吹いて。

「だから、これ。」

ぽっちりを覆い隠すように貼り付けられた、絆創膏。そのせいで更に幼くなる可愛い人の笑顔。

「ほら、もっとかっこよくなった。」
そう囁いて頬を撫でれば、ルフィが甘えるように抱き付いてきて、

「ありがとう!」

なんて…。


なんだかまるで、俺が悪さをしているとでもいうように、チクチク胸が痛むじゃないか…!






「ただし?」
チョッパーに先を促せば

「つぶすと痕が残るかもしれないから、気をつけないと。ニキビは案外、芯が深いから。」
ルフィはそういうの触りたがるだろ?なんて、笑う声を聞き終わる前に、悪い!と通話を切って寝室に走る。







別に嫉妬なんてしていない。

ただ、
俺が残した首筋のキスマークが
1ヶ月も経たずに消えてしまうのに、
ぽっちりの面影が
ルフィの桃色の頬に残るなんて
どうしても許せなくて。


別に、

嫉妬、なんて、







「悪い、ルフィ…」


小さな肩に額を押しつけて、
真っ赤になった顔を隠して、



「嫉妬した。」



そう白状して、宝石みたいな瞳を覗けば、
嬉しげに笑う憎らしいほっぺを、


きゅっと、甘く抓った。









2013/01/17
/あなたの可愛い吹き出物は、僕の心に火をつけるスイッチなのかもしれません。




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