slam dunk



shall we game?



ボールの跳ねる音とシンクロする鼓動に、ゴールを見上げる瞳を想って、吐息をついた。


はぁはぁと荒い息遣いに、潤んだ瞳。艶やかながらも少し乱れた髪に、透き通った睫毛はあまりに繊細で。大口を叩いているいつもの様とは違っていて。
「もうバテた?」
からかうように瞳を細める。

跳ねるボールを追いかけ駆ける横顔が美しくて。シュートを決めた際のぱっと明るく瞬く瞳が愛らしくて。肩の揺れに合わせ動く艶めく髪と、息を荒げたその人の薄く開いた唇を眺める。
「…仙、道。」
掠れてはいるものの空気を震わせるその声は、どこか甘くて柔らかで。
「まだ続ける?」
そう尋ねて、そっと身体を離した。

繰り返し鳴り響くバウンド音に、木の板の軋むゆったりとしたリズム。ぽたぽたと落ちる汗に、食らいつくようにこちらに向けられた視線。
「意地っ張りだな、ノブナガくんは。」
熱気のこもった身体に、リードさせるかと伸びた腕はしなやかで。その腕からするりと抜けて身体を前へと傾ければ、息を呑む喉音が耳に届いて。
「欲しいって言えばいいのに。」
ぽつりと呟けば、ゆっくりと身体を密着させて。

ベッドに沈む相手と、溶けた結合部の熱に吐息をついた。

ボールを取り合うあの感覚に似た高揚感に、それ以上に甘ったるい空気。未だ意地を張るようにこちらをきっと睨む相手に飽きれたように笑って、そっと小さな顎先を摘んで少し強引に視線を合わせれば、どこかぼんやりとした表情に幼さを見て。親指で柔らかな唇を擦れば、湿った感触に肌に触れる熱い吐息。
「仙道が、言えば、してやる。」
むっと尖らせた唇に繋がったままの身体が興奮に震え、さらに奥を求める。
いつものヘアバンド代わりに前髪を掻き上げて、汗のせいで貼りついた髪を耳にかけてやる。
「じゃあ、言いたくなるまで我慢比べ続行か。」
優しい表情で酷く意地の悪い言葉を吐いた。


事の発端は甘え下手の相手との意地の張り合い。
「素直にキスしたいって言えばいいのに。」
普段とは違い、甘い雰囲気にもごもごと口籠る相手の頬に触れて呟いた一言が、小さなプライドに障ったのか、
「おれはキスしたいなんて思ってない!いつも仙道がしたそうだからしてやってただけで!」
そう告げた言葉に、ほんのすこし加虐心が疼いたというか。愛おしさが溢れてしまったというか。
気付けば唇を合わせる事なく繰り返される、それ以上の行為。
汗と、どちらともつかないとろりとした白濁色に塗れ、溶けてしまいそうなほど熱い身体に思考までふやけてしまえばいいものの。残念ながらベッドの上のふたりには、この程度、白熱した試合を思えば辛くもなくて。

お互いの負けず嫌いを考えれば、きっと今夜は唇を合わせる事なく過ごすのだろう。それはそれで構わないかと考えて、そっと自らの唇を舐めてみれば、ちらりと物欲しげに輝いた淡い瞳。
ぎゅうっと締め付けられたそこに熱が溜まるのがわかれば、それだけで口元が緩んで、楽しくて堪らなくて。
「コート上よりわかりやすいな。」
そう囁いて、額を合わせれば唇を重ねることなく至近距離でお互いの吐息を混ぜ合って。とろとろに溶けた視線に柔らかに笑いかけた瞬間、いきなり抱き込まれた後頭部に目を見開けば。


ぴとり、唇が合わさった。




「仙道から、した。」
「不可抗力。」
リングの上をぐるぐる回り続けるボールのように、
「息できないくらい口の中、舐めてきたくせに!」
「それはノブナガくんもでしょ?」
お互い判定は宙ぶらりん。

それでも楽しいと思えるのは、きっと。


マーク相手が君だから。









2019.10.19
次はバスケで勝負をつける?





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