ClassicaLoid



淡色メトロノーム



ふわり揺れた鮮やかな髪に、速まるテンポが恋しくて。


熱い空気に溶けてしまいそうだとゆったりと瞳を開けば、いつになく静かで真っ直ぐな視線が降ってきて。それだけで心がぎゅっと掴まれる。
「ルー君、痛くない?」
心配げに尋ねられる言葉に、頬に触れる指先が温かで。そこには普段の子供っぽさはなくて。繋がったふたりの体温に脳が満たされる。
「痛いと言ったら、やめるのか?」
強がって意地悪に尋ねてみれば、困ったように細まった目元にきらり星屑が映って、唇がするり合わさった。

さらりと解けた桃色の髪が降ってくれば、それはまるで淡い色のカーテンのようで。部屋に溢れる月明かりを柔らかに透かす。
離れた口元に代わりこてんと重ねられた額に、長い睫毛は絡まるほどに近くて。
「ルー君が我慢できないくらい痛いなら、やめる。」
甘い声で囁くその人の背中に腕を回せば、そっと首筋を撫で上げて。そのまま、桃色の髪を指で梳き纏めれば、窓から漏れた光に映った陶器のような肌はふわりと色付いて、下腹部に感じる熱の質量が増す。
「その割に、ヴォルフの身体はやめる気がないようだ。」
くつりと笑って鼻先を触れ合わせてみれば、零れた吐息は魔法のようで。
「だって、ルー君が欲しいから。」
そう告げる真っ直ぐでいて儚げな表情に、鈍い痛みと激しい圧迫感が消えた。

動きに合わせ揺れる横隔膜に、震える声帯。意図せず溢れた涙に視界は潤んで、相手の名を繰り返すことしか叶わなくて。
「気持ちいい?ルー君。」
するりと頬を撫でる手のひらに、また下腹部がぴくぴくと痙攣して。じんわりと浮かんだ汗に、触れ合う肌はぴとりと貼り付いて、離れる事を拒むよう。
「ヴォルフ、ヴォルフっ」
ぐっと引き寄せた細いはずの肩が頼もしくて、急くように発した言葉に柔らかな唇が弧を描く。
「こわくないよ。大丈夫。」
額、鼻先、そして唇へ。宥めるように贈られた口付けに、胸の奥がぼんやりと熱くなれば、落ち着く間も無く迫り上がる激しい快感。
高まる想いと速まる心拍数に堪え切れなくて。自分から顔を寄せ、深く唇を押し付けた。


視界の先に揺れる夢色の髪は、まるでふたりの心の速度を表すメトロノームの針。とくとくと鳴る心拍に合わせ、くすりと幸せそうに溢れた笑みに誘われて。
名を呼ぶ声に、また揺れた。









2018.09.08
ふたりの夜はアッチェーソ。




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