鼻先の愛
「ルッチ!」
と呼び止められて振り返れば、ちょんと触れ合った白い鼻先。様子を窺うように向けられる視線がまっすぐで。
「なんだ?」
と不機嫌を装って細い肩を押し離せば、珍しくぷくりと膨らんだ頬に尖った唇。きらきらと瞬くの瞳に、自分には勿体ないほどの純真な心が眩しくて。無意識に寄った眉間の皺に、困ったように寂しげに下がる形のよい眉。
「別に・・・なんでもない、よ。」
そう先程の楽しげな表情が曇れば、視線を逸らす横顔に金色の髪がサラリと掛かって。切なさで心が締め付けられる。
照れ隠しからとは言え、自分から温かな体温を拒絶した今、腰を抱き寄せるのも不自然で。それでいて、この距離感がもどかしくて。
「パウリー。」
熱い夜のベッドの中、ふたりしか知らない低く甘ったるい声で鳴いて。両手で金糸を絡めて、桃色の頬を包む。
鼻先を自分から押し当てて、真っ青な瞳を覗き込めば、
「怒ってはいない。」
そう、優しい声で機嫌を窺う。
するりと伸びた白い腕が腰に絡まって、
「本当?」
なんて、揺れた睫毛に滴が踊って。
静かに、噛みつくようなキスをした。
ベッドの脇には、恋人が盗み見たらしい参考文献。
「鼻先を合わせるキスは愛情の表れ。」
2017.05.23
今月の特集「行動からみるネコの気持ち!」
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