toy box



fake lightning



きらきら瞬く稲光こそ世界で一番強く美しい。
そんなものに逆らうなんて、なんて馬鹿げたことだろう。


「こんなところでどうした?」
耳に届いた低く柔らかな声は自分の主である神・エネル。
「なんとなく、海が見たくなっただけだ。」
ぶらんと揺らした足は大地に触れて、ほろりと零れた土が雲の波に消える。
「ヤハハ、空魚が恐いと騒いでいたのにもう空になれたのか?」
楽しげに笑う声にひりりと心が揺れて、きっとこれも強い想いからなのだろうと、胸元を押さえて瞳を閉じた。

強い電撃を与えられて気絶した前の記憶はぼんやりしていて。たまたま落ちた雷に直撃したのだろうと話す神・エネルの声は温かで優しい。看病の合間に聞かされた話に寄れば、おれは海賊に憧れ航海にでたひとりの神族らしい。本来、エネルの隣で居ることが仕事で、それが宿命。だから、馴れない豪華な食事も御伽話のように優雅な生活も、元に戻っただけなのだそうで。
「おれが神?」
信じられず尋ねてみたところで、穏やかな神の視線は真っ直ぐで。
「私を疑うのか?」
そう口角をあげるその指先には青海から流れ着いた手配書。いい写真とはいえないが映っているのは確かに自分の姿。その下に記された名の頭にはGODの文字。

「なれたも何も、これが普通なんだろ?覚えちゃいねェけど。」
胡座をかいた膝に頬杖をつけば、手首に填められた金のブレスレットがしゃらしゃらと鳴って。
「それにおれが危険な目に遭う前に、心網で助けに来てくれるだろ。」
尖らせた唇に、どさりと隣に腰掛けた神の腕が腰に回って、素肌と素肌が触れる。
「なんだ?こうして迎えにこさせるのも計算済みか?さすが神は先を見通し行動する。」
どこか不安定な心の透き間に、他人の体温はあまりに恋しすぎて。こうして耳に響く心音に、何故だか泣きたくなる。
「エネル。」
小さな声で囁いて擦り寄れば、髪を撫でる指先に肩がふるりと震えて。
「青い海が、見たい。」
自身から抱きついて、甘えて押しつけた唇で神の首筋に吸いついた。
「こんなにも美しい白い海と大地があるというのに、お前はわがままだな。」
そっと包まれた両頬に、見つめる瞳は深くて。嗚呼、神のお考えなどわかりやしないと考えて。あれ、自分は神ではないのか、なんて瞳を揺らす。
「神・ウソップ。」
甘く低い声に下腹部がきゅうっと収縮するのがわかって。何故だか、この先が恐くて。
「エネル。」
ちかちかと瞬く脳裏に、鮮やかな青い海と麦わら帽子、幾人ものクルーの笑い声が浮かんだ瞬間。黄金に包まれたカブトに触れる間もなく、
「お前はもうおれのものだ。」
額に触れた唇から、雷が落ちた。

柔らかな寝具の上、侍女が向けたフルーツを生まれたままの姿でかじる。
「なんだ、まだ腹が減っているのか?」
上機嫌に笑う神に身を寄せれば、埋まらない隙間を塞ぐように、そっと自ら唇を重ねた。


「嗚呼、我らは神なり。」









2019.03.10
身体を巡った雷が心までをも支配して。






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