Titel



あと3%の羨望

(ZL前提・LL)


静かなはずの夜更け過ぎにカサコソと聞こえる、小さな物音。
「トラ男、身体、痛くねェか?」
なんて、覗き込んでくる大きな瞳に、普段に比べて小さく落とされた声。
腕に抱えられた毛布をそっと肩にかける様をみれば、どうやら此方は寝ているものと信じきっているらしい。
鼻を掠める甘い匂いに、時折、重なる肌が愛おしくて。

心がドロリと溶けて、喉が焼けるように熱く感じた。

夜風に冷えた頬を心配げに撫でる指先が、あまりに優しくて。
前触れもなく手首を掴んで、ぐっと押し倒せば、渇いた唇で桃色のそれを塞いでやる。
ふわりと舞った毛布が、ふたりの身体を包んで、闇夜に隠す。
少し強引に押し込んだ舌先に、躊躇うように開いた口元が何とも魅惑的で、抵抗しようと発せられるはずの言葉ごと、唾液に絡めて呑み込んだ。
全力を出せば突き飛ばせる自分を、弱い力でしか押せない相手に、脳内がくらくらして。

緑髪の剣士を見つめる、熱い視線が嫌で。
幸せそうに交わす言葉が憎らしくて。

今はおれだけを、なんて、独りよがりな幻想を抱けば、酸欠気味に脱力する細い身体を抱き締めて、銀の糸を光らせながら唇を離す。
「…トラ、お?」
ぼんやりと潤んだ瞳に月が映って、美しくて。

瞬時、助けを求めるようにちらりと逸らされた瞳が胸を貫いた。


「黙っててやるから。」
なんて、まるで相手から欲しているかのように囁いて、小さな声で脅しをかけて。

「知られて困るのは、お前だろ?」
そう、優しく微笑んで、

また


酸素を奪って、身体を重ねた。




甘い唇が欲しい。
宝石のような瞳が欲しい。

ほんの少しでいい、愛してほしい。


押さえつけた欲望がどろどろ溶けだして、
君に手を伸ばすまでに必要なのは、




あと3%の羨望








2016.09.20
もう、後戻りはできないから。








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(Thenks/つぶやくリッタのくちびるを、)





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