Osomatu



ふたりきりのネバーランド


静かな世界にふたりきり。
薄暗い天井を見上げれば、いつかの言葉が頭を掠めた。


安っぽいホテルの一室。ベットの上、間抜けな寝顔の兄を見つめれば、自然と笑みが漏れて。ベット脇に落ちた真っ赤なパーカーを拾えば、いつもは吸わない煙草を一本拝借した。
淡い光が零れる窓辺で吐き出す紫煙が、ぼんやりとした気持ちのようで。肺を満たすように、ゆっくりゆっくり、また煙を吸った。

「カラ松…?」
甘ったるい声に、可愛く跳ねた寝癖。
「よく眠れたか、ハニー?」
短くなった煙草を灰皿に押し潰して、愛しい人に手を伸ばせば
「隙あり!」
なんて、引かれる身体。
ぎゅうっと絡む腕に、キスマークの残る首筋が目に入って。
「まだ、時間あんだろ?」
と尖らせた唇は艶やかで、ちくりと胸が痛んだ。

重ねた唇はきっと苦い大人の味。
なのに、じゃれあう俺達はきっと、まだ子供で。

「かわらなくていいよ。」
そう言われたいのは、きっとおそ松なんだろう。

「かわらないから。」
そう零れた言葉に、真ん丸な瞳がふわりと見開いて。
「俺は、かわらないぞ。おそ松。」
そっと掻き上げた前髪に、白い額が愛しくて。
ぽろりと落ちた涙に気付かないふりをして、ぎゅうっと強く抱き締めた。


嗚呼、此処はふたりきりのネバーランド。







2016.05.22
「かわらなくていいよ。」なんて無責任な言葉は紡げないから。








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