何もない
愛しい弟が俺を助けにくる
来ないでくれと願った。会えたって、どうせ微笑み合えはしないのだから。
「兄貴の威厳」だとか「プライド」だとか言う前に、大切な愛しい人に危険な思いをさせる自身が憎くて…繋がれて離れはしない腕を何度も引いた。
すきなんだ
愛してるんだ
弟だとか言う前に…
「………来るな、ルフィ…」
頼むから、もうこれ以上心配をかけないでくれよ。
動けない体では、もうお前を守ってやれないのだから。
抱き締めて、キスをして…お互いを求め…愛の言葉さえ、囁いてやれないのだから。
胸が張り裂けそうになったって、抱き締めてくれる小さな胸はない。
瞳から落ちる涙を掬う柔らかな手もない。
弱音が洩れてしまいそうな唇を塞いでくれる甘い甘い唇だって………
もう俺の前にはないのだ…
そうさ
夢も希望も、愛する人も…
地獄には望むものなんて
何ひとつないのだから……
/願って願って願った先には、もう何もない。
2010/01/11
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