Not ZL



ありがとう


ただ、あの頃はお前の笑顔が欲しかったんだ…。




「エースっ」
と笑顔を向けるルフィの手には、お皿に乗った大きなケーキ。
「お祝いしようぜっ」
とにっこり笑う。

「そんなケーキ、どうしたんだ?」
エースは驚いて尋ねる。


毎年、爺ちゃんと祝う正月にはケーキなんてなくて…

今年は仕事で爺ちゃんさえいなくて…

ルフィは「海軍なんて嫌いだっ」と泣いていた。生意気だけど、爺ちゃんのことが好きだから…

正月ぐらい甘えさせろ、と爺ちゃんに、ちょっと腹が立っていた。ルフィを泣かせるから。


誕生日なんて、どうだっていい。
ただただ寂しい日だと、確信していたから…




「マキノに頼んで作ってもらったんだっ」
キラキラ光る笑顔は眩しくて、ただ愛しかった。


「ルフィ…」
と小さな声で名前を呼び、髪を撫でてやる。

ケーキを受け取り、そっとテーブルに置くと…


ぎゅっと抱きしめた。


ルフィの体温が体を伝わり、温かかった。
小さな体が愛おしかった。
ぎゅっと抱きしめて、離せなかった。


「ありがとう」

と腕の中から声がする。


「生まれてきてくれて、おれの兄ちゃんでいてくれて…ありがとう」


あまりの愛情にクラクラする。

これ以上、どうすればいいのかわからずに、また抱きしめる腕に力を入れた。

「バカ、野郎…」


何故だか涙が零れそうで…


「……ありがとうな、ルフィ」


体をゆっくりと離し、そっと唇を重ねる。


柔らかな感触に酔いしれて…
甘く甘く脳が痺れて……

しばらくそのまま、じっとしていた…




「エー、ス…?」
赤く染まった顔でルフィがエースを見上げる。

パッと目の前に出されたのは、数枚の紙切れ。
「プレゼントっ…」

受け取ってめくってみると、愛らしい字で…


「おつかい券」…

「せなかながし券」…

「いっしょにねる券」…

「ぎゅってする券」…


ふっと笑ってエースが尋ねる。
「この券ねぇと、してくれねぇの?…一回きり?」


「…ウラっ」
ルフィがエースの持つ券を指さす。

「ウラ、見てっ」


エースがぺらんと券を捲る。

そこには……


「ずっと」


全ての裏に大きく書かれた三文字が、とても嬉しくて…


「ありがとう…」


とまた抱きしめた……








寒空の下、目覚める…

あぁ、そういや誕生日だったんだ、なんて今更気付いて…

昔の思い出を夢で見たことに、少し苦笑いを浮かべ……




お前はまだ覚えてる?

と、冷たい月を見つめて………










/なぁ、もしこの空をお前も見ているなら…どうか、この想いだけでも……
09/01/07


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