Not ZL



歪な鼻唄

(幼少期ジャブラ×スパンダム)



聴こえるのは不思議なメロディー。
ただただ美しい、

君の横顔




「黙って座っておくように」
と念を押されて、床にゴロンと寝転がって、"ご主人様"を見上げる。

今日は、ピアノのレッスンらしい。
開いた楽譜には、小さなおたまじゃくしが踊っていて。それを見ながら、ぎこちなく繰り返される旋律。

「はい、もう一度。」
厳しい声が聞こえれば、また初めから繰り返される音楽。



あ、また同じ所で間違えた。
あぁ、またあの可愛い眉間にシワなんか寄せて。







レッスン終わりのおやつの時間。
今日のデザートは、甘いロイヤルミルクティーに上品なクッキー。

俺が歌った鼻唄に、またスパンダムは眉を寄せて。

「それ、間違ってる…」
むっとした顔すら愛しくて、わざと「ん?」と首を傾げた。


「だって、こうやって弾いてたろ?」


毎回毎回つっかえる旋律に、間違ったままの不協和音。
お前だけが奏でることの出来る不思議なメロディー。




「だ、だから、あれはっ」
自分が間違ってるだなんて、決して認めたがらないスパンダム。
「あれは、僕のアレンジ、だから…」
真っ赤な顔をして、逸らした瞳。




「坊っちゃん、嘘をつく練習しないといけませんね」




そんなに顔に出したら、誰にだってバレる嘘。
そんなに可愛い顔が、どれだけ危険か知らない、無知なしかめっ面。


いつまでも、見つめていたい整った、人形みたいな愛らしい顔。
コロコロ変わる、子供っぽい表情。


ただ、それだけを眺めていたいだけなのに…




俺の任務は、コイツを一人前の長官に仕立て上げること。

そっと唇についたクッキーを、舌で舐め上げて


「だから…」

恐いくらいに優しく撫でた、白い頬…




「俺を、騙してくれよ…」




こうやって過ごす温い日々は
全て嘘なんだって

そう、思わせてくれよ…




なぁ…




「坊っちゃん…」





何度も名前で呼べと命令されたって、それは決して敵わない。
きっと貴方を名前で呼んだら、もう戻れなくなってしまうから。

「情を持つな」
それは俺が12年間生きてきて、学ばされたこと。



だから、

俺は…





愛情振り撒く貴方の横で…


必死に冷たい仮面を被る










(貴方が歌う歪な鼻唄、それが俺の子守唄)
2011/12/27




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