Not ZL



吐息に溶ける蝋燭



星屑を背に抱きしめた身体が温かで。
泣きたくなるほど、愛おしい。


盛大に開かれた誕生日パーティーはようやく閉幕。騒ぎ疲れたのか、はたまた酔いつぶれたのか、他のクルー達はみんな夢の中。
きらきらと降る星空に、まだ暑さの残る秋風がふたりの頬を優しく撫でて。真ん丸の月をぼんやりと見つめれば、
「おっきなケーキみたいだな!」
なんて、見張り台から乗り出した身体をそっと支える。
「デコレーションはなしか?」
ただただ丸い月につられて返せば、ちょんと尖らせ唸った唇が、
「でも、今なら"ふたり占め"だ!」
と明るい声で呟いて。あれだけ食ってまだ食べるのか、と小さく笑みが零れた。

軽い身体を抱き寄せるのは容易で。甘い言葉で囁けば、いとも簡単に捕らえられる、単純な恋人が愛らしくて。
「なら、もっと甘みを加えてもらおうか。」
そう、自分ですら胸焼けしそうな声で呟いた。


狭い空間にしゃがみ込んで、星たちに隠れて、ランデブー。
白い額を合わせて視線を絡めれば、くすりと幸せげな笑みに、ふたりを包む空気が熱くなる。吸いつくような頬を両手で包めば、子供のような匂いが鼻を掠めて、少し躊躇いながらも唇を合わせた。
柔らかな弾力から体温が伝わって、血液が身体を回る。名前を呼ぼうと漏れた言葉に噛みついて、細い腰を抱き寄せれば、腕の中の体温がまた上がった気がして。
コートを脱いで床に広げれば、その上に愛しい身体をそっと転がす。
「トラ男、今日は優しいな!」
なんて、艶めいた唇が震えれば、
「いつもの間違いだろ。」
と少し余裕なく言葉が続く。

のばされた腕に導かれるように身体を重ねて、腰に回された細い脚に溜まった熱が触れ合って。
「トラ男、誕生日、おめでとう。」
普段の相手からは想像もできない、とろけた息に熱い視線。
透き通った白い肌が熱い空気に溶けてしまいそうで、繋ぎ止めるように抱き締めて、素直に言えない礼を心の中で呟いた。


静かに離した身体に宝石のような瞳を覗けば、ゆらり、潤んだ目元に映った満月が、まるで揺れる蝋燭の火のようで。
そっと息を吹きかけて、願ってみた。


この時間が、永遠に続きますように。
なんて。




真っ白な大きなケーキに蝋燭を並べて。
そっとつけた火の熱さに、ふたりの愛はとろりと溶けた。








2016.10.05
蝋燭のために尖らせた唇を、僕に頂戴。




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