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気紛れテディベア



くるんと柔らかな手触りに、大きく綺麗な硝子の瞳。


ベッドの上で転がる恋人に近づけば、ぱっと見るからに明らむ表情。
幼い子供の様だと苦笑すれば、
「トラ男、遅いぞ。」
なんて、ぷくりと膨れた頬が愛らしくて。
尖らせた唇を腕に抱いたテディベアに埋める、その様が愛おしくて、そっと湿りの残った髪を撫でれば、ぬいぐるみを抱く腕にぎゅうっと力がこもって。
「おれの入浴中にお前はそいつと浮気か?」
とからかえば、真ん丸な瞳がぱりくり瞬いた。

いたずらっ子の様に笑った目元に、
「そうだぞ!こいつは可愛いんだ!」
甘い声が部屋を満たして。
「トラ男がいない間も傍にいてくれるし、赤いリボンはおれのパジャマとお揃いだし・・・」
此方を嫉妬させようと、いつも以上に忙しく動く唇が艶めいて。
「あと、毛もくるくるだし、キャラメルポップコーンの匂いもする!」
それはデート中にそいつの上でお前が零したおやつのせいだろう、なんて、呆れる暇さえくれなくて。

さらりと前髪を掻き上げて、ぴとり、白い額に口付けた。


驚いたように漏れた息は熱くて、風呂上がり、冷え始めた首筋を掠めて。
「トラ男・・・?」
と、不思議げに向けられる視線に、目元を撫でれば、
「そんなにクマが好きなのか?」
意地悪く、くつりと笑う。
「そんなにクマ好きなら、ベポなら紹介してやるぞ?それとも、こいつが特別好きなのか?」
言葉とは裏腹に、軽い相手を抱き上げて、ベッドに腰掛け向き合うように自らの膝に座らせれば、とんと額を合わせて尋ねる。

「こいつが、特別だ。」
そう、普段以上に柔らかな声が響けば、ベアを抱いていたはずの腕が、おれの腰に回されて。ベアを挟んで、身体を重ねる。

「こいつは、トラ男が選んで買ってくれた、おれの、宝物だから。」

ふにっと首筋に押しつけられた頬の熱さに、丸い後頭部をふわふわと撫でれば、ゆっくりと愛しい瞳に自分が映って。

「それに・・・」

キャラメルとは違う、甘ったるい香りが近づけば。


ちろり、目下を熱い舌が這って。

「おれは、こっちのクマの方がすきだ。」
なんて。


潤んだ瞳が愛おしくて、溢れた愛が止まらなくて。
強く抱きしめキスをする。


ぎゅうっと潰れたテディベアへの文句は後回しに、
細い身体を押し倒して。


ふたり、持て余した心を絡めた。









2016.09.25
ふたりの秘密を盗み見るのは、澄んだ硝子の瞳だけ。





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