Titel



そんな綺麗事、

(一応R15・シリアス)




血の海の中で抱きしめて…




「大丈夫だから…」

ルフィはゾロの背を優しく撫でる。

「大丈夫だぞ、ゾロ…」




確かにお互いの熱で温かいのに…

心はとても冷ややかで……


体が疼くように熱いのに……

視線はとても冷たくて………




「敵だから、だよな?」

ルフィは下唇をぐっと噛む。
涙が零れないようにと…

「仲間の、ため、だよな…?」




2人の足下は、文字通り「血の海」で…

その場には2人と動かぬ沢山の死体が…




夢ならさめてほしいと願った…


血の海に浸っていることよりも

死体の中、抱き合っていることよりも…


何よりも、今、恐いのは…

ゾロが楽しそうに笑っていることで……


ただ、ひたすら「大丈夫」だと抱きしめた。

それしか言えなかった……




「仲間の、ため…?」
ゾロがルフィを見下ろして、ニヤリと笑う。


「綺麗事だな。」


ゾロはルフィの頬を撫でる。

その手の優しさは異様なほどで…


「ゾロ…」

ルフィはホロリと泣いた。
「じゃあ、何のため?」


ゾロはふわりとルフィにキスを落とす…

そして一言…


「俺のため。」




いつもは大好きなゾロの笑顔を、見たくないと思った…

じっと覗き込んでくるゾロに、ルフィは顔を俯ける。


「ルフィ…」

ゾロが頬に添えた手をスーっと顎へと滑らせ、ルフィに上を向かせる。

「なんで泣くんだ?」


獣のように瞳を光らせ、ゾロがルフィに尋ねる。


「俺が恐い…?」

とキスするくらい顔を近づけ、甘く甘く問う。




背中がゾクリと震え、またホロリと涙が零れた……




「こ、」
ルフィの掠れた小さな声が聞こえ…




「恐くない」


静かに、でも確かにきっぱりと言う。

真っ黒なルフィの瞳はゾロを射抜いて…




「綺麗事なんかじゃない。」

ルフィの拳はゾロのシャツをぎゅっと握り

「ゾロは優しいんだっ!」


涙の溜まった瞳で

お願い返して…と願う。


おれのゾロは…

もうあの頃のゾロとは違うから…






ゾロがぎゅっとルフィの手首を掴み、そのまま床へと押し倒す。

赤い海に2人で沈む……



「俺は優しい…」

ゾロがふっと笑う。


「お前を抱きしめてやるし、キスしてやるし、」

ゾロの手のひらがルフィの内股をそぅっと撫でる。

ルフィが、んっと瞳をぎゅっと閉じるのを愛おしげに眺め…


「いつだって、遊んでやる…」


とルフィの耳元で吐息たっぷりに囁いて……




ゾロは床に満ちた血を親指ですくい、ルフィの頬にねっとりとつける。


「綺麗だ……」


とたくさんの血をルフィに塗り込み静かに笑う。

それでも、何故か、ルフィを見つめるゾロの顔はどこか寂しげで………




「つらかったの?」

ルフィがゾロに静かに問う。

ゾロはぴくりと、一瞬だけ動きを止め
「さぁ?」
とまたルフィの頬に指で触れる。



寂しいなんて感じない…

つらいなんて思わない…


ただ、体が疼いて…

ただ、斬りたくて斬りたくて…


そう、まるでルフィに出逢って消えた

「あの頃の俺」が目覚めたかのように……



ゾロがルフィの頬についた真っ赤な液体を舐めとり、片手でルフィのベストに輝く、金色のボタンをゆっくりと外してゆく。


まるで獣のように…

欲を満たすために噛みつく狼のように…

ゾロは、何も感じなかった…




ベストを脱がすと、ゾロはルフィの胸にそっと耳を当てた………


トクトクと静かに生きている「音」が聞こえた。




すると…

先程から黙ってゾロを見つめていたルフィの腕が、そっとゾロの頭を抱きしめる。




「大丈夫。わかってるから…」


ルフィは優しい声でそっとゾロに思いを伝える。


「今までと違うから…おれ達の毎日があまりにも平和だから…。だから、不安になったんだよな?」


ルフィの手の平は優しくゾロの髪を撫でて……


「大丈夫…もう、幸せになってもいいよ。」

ルフィの腕が緩んで…

ゾロが静かにルフィの胸から顔を上げる


そして…

ルフィを見下ろせば…………






「おいで…」

と両手を開いて微笑むルフィ。


その笑顔は不安を押し潰し、ゾロの心をゆっくり溶かして…






ボロボロと涙がルフィに降りかかる。


泣くなんて……

久しぶりだな………


なんて、案外、思考は冷静で。




「ルフィは、あいつらのために、俺達のために、たくさん、たくさん、傷ついてんのに…。俺は…」




ただ、不安を消すために

たくさん殺して、

ルフィに甘えて………




「仲間のためじゃないよ」

ルフィの言葉に、ゾロの思考が停止して……

「そんなの綺麗事…だろ?」


ルフィの口調のせいか、まるで先程の自身を眺めているようで…


不思議で不思議で、堪らなかった……



「おれは、みんながいなくちゃ不安だし、嫌だって思うから…」


ルフィの睫がふるりと揺れて、その奥の丸い瞳がゾロを呑み込んで…




「おれのために、みんなを守るんだっ」


微笑んだ笑顔があまりにも綺麗で……

甘くて、優しくて………



ゾロは静かにルフィの胸へと倒れ込み

そして………




たくさんキスをして、








ねぇ…

もう、弱音なんて…言い訳なんて…


聞きたくないわ……


ねぇ…

もう、言わないで…囁かないで…


そんな…




そんな綺麗事、










/貴方には無理矢理飾った言葉より、素直な涙が似合うから…
09/01/15
「安物スーパーマン」より
そんな綺麗事、


*




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(Thenks/つぶやくリッタのくちびるを、)





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