星に愛された孤児
「やだやだっ、エース!」
手足をばたつかせ、ルフィが叫ぶ。
「ひとりはやだっ!」
ぱっと瞳を開けばゾロの心配そうな顔…
汗びっしょりのルフィをゾロは優しく抱き寄せる。
「ひとりじゃないぞ…」
そして耳元でしっかりと伝える。
「俺がいる…」
「ゾロっ」
ルフィがギュッとゾロに抱きつく。
そして顔をゾロの首筋にうずめ。
「ひとりは…恐いっ…」
ともう一度静かに呟いた。
静かな夜のキッチン。
2人でただ、水を飲む。
気持ちを落ち着かせるため。
「あのな…」
ルフィが静かに呟く。
弱く、悲しげに…
「父ちゃんは昔から、いないって思ってた。母ちゃんも知らない。知ってんのは、爺ちゃんとエース、だけ…。」
ふるふると睫は揺れ、瞳は微かに潤みをおびて…
「でも、爺ちゃんは、海軍の仕事が忙しくて、ずっと家にいなかったし、おれはずっとエースと2人だった。」
コップを持つ手が震え、水がゆらゆら漂う。
「でもな…、エースも海に出たんだ。広い海に。夢だって笑ってた。おれは…止められなかった。寂しい、なんて、言えなかった。…だって…エースは笑ってたんだ…」
ほろりとルフィの瞳から涙が零れる。
「毎日、ひとりで星を眺めた。…エースも見てるかな、なんて考えて。星は毎日おれに笑いかけてくれた…。でも、それでも……」
ポロポロと零れる涙は星屑のようで……
「それでも、おれはひとりだったっ……」
そっとルフィを抱いてやる。
パリンとコップの割れる音が聞こえたけれど、聞こえないと、自分に嘘をついた。
「俺はひとりにしないから…」
ゾロがルフィに囁く。
「ずっと、一緒にいてやるからっ!」
力強く抱きしめる。
ルフィが安心出来るように…
ゾロの胸に顔をうずめ、小さく願う…
「お願い、ゾロ。おれの側にいて?もうずっと離さないで…」
でないとおれは…
戻ってしまうのだ……
そうあの頃に……
あの頃のおれは、まるで………
星に愛された孤児
/ひとりで星を眺めた、あの頃とは随分違う。だって…今は……一緒に星を見てくれる彼がいるから…
09/01/06
「安物スーパーマン」より
星に愛された孤児
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(Thenks/つぶやくリッタのくちびるを、)