Titel



部屋の豆電球を握り潰す



パラパラと硝子が散る…

手のひらから垂れる血なんて気にしない




大丈夫か?って聞いたって、お前は、大丈夫だ、といつも微笑むから。
俺がどれだけ心配しているか、ちゃんと伝わっていないんじゃないかと少し不安になる。




海軍船に攻められて、今日は朝から大忙し。
クルー総出で立ち向かう。

ドンっと大砲が撃たれ、パンパンと軽い鉄砲の音も鳴る。
船から船へと飛び移れば、キンっと刃の音があちらこちらで響き…




「今日は大変だったなっ」
とルフィがゾロに抱きつき明るく笑い言う。
「怪我、痛くねぇか?」
ゾロはルフィの頭を撫でる。

刀で戦うゾロよりも、生身で向かうルフィの方がやはり怪我も多い。
ルフィの綺麗な肌を包帯やら、バンソウコウが覆い隠す。

「大丈夫だぞっ」
とにっこり笑い、ルフィがゾロにキスをする。
「これぐらい、へっちゃらだっ」

ルフィはゾロの頬に手をやり
「ゾロは痛いとこない?」
と小首を傾げる。

「大丈夫だぞ」
とゾロはそっとルフィの額へ口付けする。
「よかった…」
ルフィは恥ずかしそうに笑うと、真っ黒な瞳でゾロにねだる。

「もっと、キスして?」






その晩、気付くと隣で寝ていたルフィがいない。
のっそり起き上がり、灯りを手に部屋を出る。

夜の船内をひとりでただ歩く。

誰もいるはずのない部屋の灯りが廊下にぽうっと洩れていて…
扉の隙間から中を窺う。

「痛く、ない…」
小さな声…

「大丈夫、痛くない…」
自分の手のひらでそっと腕を撫でている。

「痛くないっ」

下唇をきっと噛み、ルフィが苦しそうに呟いている。
撫でているのは、今日、負った傷。

「ルフィ…?」
そっと声をかけてみれば、驚いたように振り返るルフィ。

「ゾ、ロ…?」

「何してた?」
と尋ねれば、慌てて言い訳を考える。

「えっと…ハラがすいて眠れないから、ちょっとウロウロしてて…それで…えっと、」




ルフィに近づき、ぐっと腕を引っ張る。
「痛いっ」

ルフィが小さく呻く。




「なんで、隠すんだ?」
ルフィの瞳を見つめる。

「なんで、俺に隠すんだ?」
ルフィの瞳は微かに潤んでいて…

「だって、でもっ…」
と口をまごつかせる。


「でも、何?」
少し声を低くすれば、ルフィの肩が悲しげに震える。
「眠れねぇほど痛いのに、なんで隠した?」



悲しかった…
こんなに苦しんでいるのに…
なぜ、教えてくれない?

愛おしくて仕方ないのに
お前には伝わんねぇの…?







静かに立ち上がり、上を見上げた。
部屋を照らしている小さな豆電球にさえ、なぜだか腹が立った。


手を伸ばし、豆電球を掴む。
そして……




パリン、と音がして、豆電球が手の中で砕けた。

「ゾロっ!」

ぼんやりとした光にルフィの驚いた顔が浮かぶ。

ルフィは血が垂れる拳にそっと触れ
「大丈夫か?痛くないかっ?」
と慌てて見上げてくる。




そんなルフィをぎゅっと抱きしめた。




「俺のことは心配するくせに…」

「…ゾロ?」
ルフィが不安げに呟く。

「俺だって、お前が心配なんだっ」
強く強く抱いてやる。






ルフィがゾロの背中に手を回し、優しく撫でる。
「大丈夫。」
静かに静かに語りかける。
「わかってる、大丈夫。」


「ルフィ…?」
そっとルフィの顔を覗けば、きらりと光る何かが見えて…

「大丈夫、ちゃんと知ってる。ゾロはいつだって、心配してくれるもんな…」
ホロホロと落ちる涙はゾロの服にシミを作る。


「でもな、俺だって、大好きな人に、心配ばっかりかけたくないんだっ…」


優しくて、でも意志のある、しっかりした言葉…


「ごめんな…ゾロ。ありがとう…」


ぎゅっと抱きしめ返す腕は温かで……


「なぁ、キス、して?」


囁く言葉はうんと甘い……







愛しい愛しい人を守りたいと思う…

愛しい愛しい人を全て知りたいと思う…

わがままな俺はぎゅっと抱きしめ…

抱きしめられ…………

部屋の豆電球を握り潰す










/もうお互い、痛いのは無しにしよう?だって心が痛いから…
09/01/06
「安物スーパーマン」より
部屋の豆電球を握り潰す


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(Thenks/つぶやくリッタのくちびるを、)





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