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もやもやもくもくもんもん

(ZL←N)


今、幸せなはずなのに…
何故こんなに切ないんだろう…




ひとりで食べるデザートだって、美味しいのだけれど…ゾロに向けるアイツの笑顔を眺めながら食べるミルフィーユに、なんだかため息が出て…

「ナミさん、ミルフィーユ美味しくなかったですか?」
と慌てるサンジ君の言葉なんて耳に入らなくて、ただ幸せそうなふたりに、私の唇から無意識な言葉が漏れて。


「ホント…溜息が出るくらい、甘ったるいわね…。」




甲板にパラソルと簡易テーブルを引っ張り出して、気分転換にと快晴の元、ペンを走らせる。
デッキはいつもと変わらず賑やかで、私の大好きな輝く笑顔のアイツの声も聞こえて。
うーん、と背伸びをして、航海日誌に向き直る。


「ナミさん、ミルフィーユいかがですか?」
と、いつも通りの優しい声が聞こえれば、冷たい紅茶がカランと音を立てて、私を誘う。


サクリと割れた生地に、そっと沿えられていたバニラアイスクリームを乗せて、口に運ぶ。
美味しい、と小さく微笑み視線を向ければ、いつものごとく幸せそうにデザートで口をいっぱいにしたアイツが見えて……

「こら、あんま詰め込むと喉詰めんぞ。」
とアイツを抱き締めるゾロが見えた。


ふたりの間を繋ぐのは甘い視線。
まるで愛の香りが漂ってきそう。


キスしそうな程、近い唇。
はにかむようなお互いの笑顔。
小さな体を優しく包む太い腕。


甘いミルフィーユと甘過ぎるふたり……見ているだけで胸焼けがしそうで、静かにデザートフォークをおいて、溜息をつく。

決して、ゾロが憎いだなんて思わない。まして、鈍感なアイツを恨むなんて、お門違い。
ただ、素直になれない自分が嫌で……


「ナミ、さん…?」
心配そうに顔を覗かれ、ハッとすれば、無意識のうちに会話を交わしていたらしい。
「え、えっと…」
「甘過ぎましたか?すいません。」
急いでデザートを下げようとするサンジ君の背中で、ふたりへの視線は切られて……

甘い、夢からフワリと醒めて…


「サンジ君…。」
なんて弱々しい声。

「お願い…」
あぁ、私じゃないみたい。

「そこを動かないで。」
でも、もう見たくないの。


サンジ君は、驚いたような顔をした後、何かを察したように苦笑すると
「…やっと、俺に惚れちゃいました?」
なんて、いつものヘナヘナの笑顔なんかじゃなくて、普段と変わらぬ整った、悲しそうな顔を見せた。

「ふふ、自惚れないでよね…」
笑う私の瞳が濡れているのを、サンジ君はどう思っているのだろうか。

「ただ、眩しかっただけよ…太陽が。」




強がれば強がるほど涙が溢れて…


「日射がキツい上に、今日は波風が強いですから、目に染みるでしょう?」
と優しく差し出されたハンカチに手を伸ばして…

「サンジ君はお人好しね。」
と、私はただ微笑んだ。






あぁ
わかっているのよ

勇気を出して真実を述べて
それで幸せになれるなんて
そんな簡単なことじゃないの…

そうよ
今の状態がお互いの最高の幸せ。

私の幸せ。


だって私じゃ
あんな笑顔にさせられないもの

知っているわ

でも……

私の胸は
いつだって靄がかかって……




もやもやもくもくもんもん










/素直に離せば空は晴れるの?
2010/01/27
「安物スーパーマン」より
もやもやもくもくもんもん





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