Titel



貴方に染めて欲しかったのよ



「すき」という言葉が言えなくて…

言っちゃいけないと自分に囁いて…

そして、ただ「仲間」を装って…




いつものように見るゾロの背中が、いつものように綺麗で…。それだけで幸せだなぁ、と感じて…。

太陽がギラギラ光るお昼から、汗いっぱいに頑張るその姿が「すき」で、「仲間」とか、そういうんじゃなくて、本当に「すき」で…。ただ見つめているだけで、近くにいるだけで、ドキドキした…。


「なんだ?ルフィ…」
とゾロが汗びっしょりの顔をコッチに向けて、あのいつもの、おれの大好きな低い声で尋ねてきて…


見とれていたなんて…

言えない

言わない


だって

「それ」は邪魔だから…




ただにっこり笑って
「がんばってるなって見てただけ…」
なんて…嘘じゃない、本当に見てただけ。

「すき」も伝えず、ただ見つめるだけ…




「ルフィ…」
ゾロがそっと近づいてきて、深い深い緑の瞳がおれを見つめて…

おれはぴくりと肩を揺らせ…


「馬鹿だな…」
とゾロの大きな手が、おれの頭に優しくのって…

「なんか、辛いことあった?」
と、そっと髪を撫でられた。

ゾロの困ったような…

優しい笑みが好きで…………




辛かった…

ずっと…

でも、言っちゃいけない…


「すき」だなんて

おれ達にはただの重荷になるだけだから…


言えない、言っちゃいけない

「すき」は……

おれ達をダメにする言葉…


ただ、見つめて

ただ、「仲間」が幸せで…


それで満足じゃないか………




「なんでも、ない…」

ゾロの瞳を見たくなくて、俯く。

きっとゾロには嘘だってバレてるんだろうな…なんて。思っても決して顔を上げない。

「なんでも、ないよ…。いつも大変だなって…それだけ…」


辛くて苦しくて、涙が出て…

お願いだから、こんな涙に気づかないで…

と、必死で俯いて……

下唇を噛んで……






体がふわりと包まれた…


「大丈夫だよ…ルフィ…」

だなんて、耳元で甘く囁かれて…


「好き、だ…」




やめてくれと心が叫んだ…

ゾロの「すき」は
きっと「仲間」の「すき」だから…

ただ安心させるための…

それだけの………




涙がボロボロ零れて、もう隠すなんて出来なくて…

「ゾロの馬鹿っ」

と小さく呟いて…


「そんな簡単に…言うな…」

と抱きしめてくれる温かなゾロの体を押し返して…


「すきだなんて、簡単に言うなっ!」

とゾロを睨んだ。


きっと、おれの瞳は涙でいっぱいで…




「ゾロはおれのこと、仲間だって…仲間として好きなんだろ…?おれは……」


ゾロは困ったようにおれを見つめて…

何でも見透かしてしまいそうな、あの瞳に、見ないで欲しいとさえ思った……




「おれは"愛してる"が欲しいんだっ!」




両手の拳をギュッと握って…


今まで堪えていた心の叫びを

思い存分叫んで……






大きな手がおれの腕を掴んで…

「離せよ」と言う前に………


ゾロがおれの腕を引いて…



唇に甘くて温かな熱を感じた…


「ゾ、ロ……」

いきなりのキスにおれは目を見開いて、ゆっくりとゾロを見上げる。




ゾロはもう一度、優しくキスをすると

「愛してるよ…ルフィ…」


とギュッと抱きしめてきて…

「いつでも、愛してるって思ってた…」


おれは、ただひたすら、嬉しくて嬉しくて泣いて…


「不安だったな…ごめんな…」

と優しく背中を撫でてくれる、ゾロの胸へと顔をうずめた……









その後はただ幸せで…


「顔洗おうな?」

と優しく抱き上げられて、お風呂場に…


ふたりでゆっくりとお風呂に入って…
たくさん、話して…


ふたりで「すき」を伝えあって…




「今晩、ベットで遊ぼっか?」

と意地悪にも、耳元で大好きなあの声が響いて……


今まで言えなかった言葉を返した…








貴方を無理やり

私色にしてしまうんじゃないかって

ずっと、心配で心配で言えなかった一言…
今まで怖くて聞けなかったあの一言…


「すき」


たった二文字なのに

貴方にそう囁かれると…

涙が出るほど、嬉しくて…


私の体に貴方の色が染み込んで…


そう…

私がずっと望んでいたこと……

一緒に過ごすだけじゃ足りなくて……


私は……………




貴方に染めて欲しかったのよ










/だから貴方も私色に……
09/01/19
「安物スーパーマン」より
貴方に染めて欲しかったのよ


*




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