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太陽へ続く道


運転手は可愛い人。
スピードに乗ったタイヤが太陽目指してぐんぐん進む。


「じいちゃんに会いに行こう!」
とお揃いのTシャツをきた恋人に誘われて、今日は朝からドライブデート。

普段なら運転席に座るはずの腰を助手席に収めて、
「今日はゾロが地図係だぞ!」
と手渡された大きな世界地図にくすりと笑って。
「よろしく頼む。」
なんて甘く返した。

クーラーの効いた涼しい車内で、上機嫌で歌う恋人を見つめて。役立たずの地図を畳んで、2人のあやふやな記憶で道を選ぶ。
同じ場所をぐるぐる回って、何度も見たコンビニへ寄り道すれば、へたくそな駐車に時間をかけて。急ブレーキでガクンと揺れる身体に、けたけた笑う運転手さんが愛しくて。
信号待ちの時間を使って、そっと優しく頬に触れれば、
「楽しいな。」
なんて、ぽろり、声が溢れた。

こんな風に言葉に出来るようになったのは、いつからだろう。
「おれも楽しいぞ!」
そう返す笑顔を、独り占めしたいと願ったのは、いったい何度目だろう。


入道雲に向かって、ハンドルを握って。
「あっちだ!」
なんて、迷うことなく進むルフィの瞳が太陽に煌めけば、心がぎゅうっと締め付けられて。

長い坂をぐんぐん登って、ぱっと開けた視界には、真っ青な空をバックに鮮やかなヒマワリ畑が広がっていて。
夢のような光景に目の前が輝いて、まるで御伽話の世界のようで。

「写真を撮ろう!」
という明るい声に、現実に引き戻されれば、引かれた腕のままに一面黄色の迷路に飛び込んだ。

さわさわと揺れる茎と葉の間を抜けて、ぱっと立ち止まった恋人に見上げられれば、世界にまるで2人きりのようで。
そっと柔らかな頬を両手で包んで、赤い唇を欲して静かに静かに顔を寄せれば、優しく吹いた夏風に

「シャッター係がいねェと2人で撮れないな!」

なんて、色気のない声が響いた。

ぷっと漏れた笑い声に、
「そうだな。」
そう瞳を伏せて、前置きもせず、

触れるだけのキスをした。



ヒマワリの揺れる、熱い夏の日。
2人ぼっちの世界で、太陽の祝福を受け、まっすぐまっすぐ愛を謳った。









2016.08.14
きらきら輝く君は太陽。そこに向かう僕の心は真っ直ぐな道。






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