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白梅匂いて我想いける



はらはらと舞い落ちる花吹雪に、静かにそっと息を吐いた。


食事の準備中、少し遊んでいろと告げられて。ゾロと一緒に木陰で休む。
夕暮れ時の風は心地よくて、しっとりとした大地に酒瓶からぽたりと落ちた滴が染みた。赤から群青へと移り変わる空は絵の具で描いた水彩画のようで、雲のない一面のキャンパスは静かにそっと微笑んだ。
ぴょんと立ち上がった勢いで駆け出せば、
「迷子になんなよ。」
なんて、背中にかかった声は柔らかで。
「ゾロこそ!」
からかうように座ったままの相手に告げれば、ぱたぱたと甘い匂いにつられて走る。

ふりかえっても見えなくなった宴の用意に忙しない仲間の姿に、目の前に現れた丘の上、天国を思わせる白い世界に瞳を開く。
どっしりと構えた太い根っこに、風に笑うようにさわさわと揺れる幹。満開の花はレースのように繊細で柔らかで。
「雪の花、だ。」
そう息が溢れた。
黒髪に積もる花弁は温かで、それでいて美しい純白は大好きな雪に似て、うきうきと心を弾ませる。水を掬うように丸めた手のひらに落ちる花びらは小さな吐息にも溶けてしまいそうで。ふと、甘い愛しい笑顔が頭に浮かんだ。

「ゾロ、これ!」
開いた手の中にある雪の花を見せれば、髪を撫でながら柔らかな表情を浮かべる優しい人。
「どこで見つけたんだ?」
その言葉が嬉しくて堪らなくて、腕を引いて空に向かって足を伸ばした。

ふたりの頭上には、立派にそびえ立つ美しい純白の世界。白く咲き誇った花たちは凛と静かで、それでいて鮮やかで。まるで天国を思わせて。
「雪の木だ!」
そう自信満々に胸を張れば、風に舞う淡色のそれに手を伸ばすゾロが、
「雪にしては、冷たくねェな。」
なんて、甘く笑って呟いた。
その言葉が可笑しくて、頬を撫でた夜風の心地よさに笑みが零れて。そっと開かれた腕の中、熱い胸元にぎゅうっと鼻先を埋めた。
「今は冬じゃないから、雪だって冷たくないんだぞ!」
くすくす笑って告げてみれば、そういうもんかと囁く声は甘くて、黒髪を梳いて広い額に触れた唇に火傷しそうだと目を閉じた。

日の暮れた丘の上は、夏を招く季節にしては肌寒くて。丸い月が爛々と謳った。
頬から伝わる体温が心地よくて、ふわふわと瞼を落とせば、そっと髪を梳く指先に吐息をついた。
大好きな雪の中、こうして大好きな人と過ごす時間はあまりに尊くて。夢の中のようだと、夢を見て。


ぴとりと触れた唇に、声を重ねて囁いた。
「どうか、この夢を永遠に。」








2018.05.05
夢の世界もあなたと共に。

Happy birthday to LUFFY!!








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