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たこさんウインナー


くすくす笑った明るい声に、つやつや尖った可愛いお口。


お腹がぐうぐうと鳴る晩ご飯時。随分と上達した恋人の料理からは美味しそうな湯気が立って。
「今日のご飯は、かためだぞ!」
なんて、つまみ食いしたらしきルフィの頬には純白の米粒。毎日違う固さで出てくる白飯さえ楽しみで、焦げたウインナーに、ごちゃ混ぜに炒められた野菜すら愛おしい。
いつも通りにテーブルについて、ふたり一緒に手を合わす。
「いただきます。」
そう、心を込めて告げれば、薄味の味噌汁に口を付ける。
同居当初は食べ物かどうか認識するのすら困難だった恋人の手料理が、ここまで形になったのも愛の賜物だと思えば幸せで、胸が熱くなって。
固い人参と焦げて苦みが出たキャベツを咀嚼すれば、かための米を口に含む。言葉になんてしなくとも、毎日、味を確認するようにチラチラ視線を向けるルフィの瞳に気づかないはずもなく。がつりと大きな口で頬張って美味しいぞと瞳で告げる。
安心したように微笑んだ瞳が嬉しくて、つられて笑えば、思い出したように伸びた箸の先には真っ黒なウインナー。
「今日は美味しくできたから、たこさんウインナーするぞ!」
と目の前に出されたそれは、切り込みも何もないつやつやした固まりで。
するなら焼く前に切り込みを、と言い掛けて恋人を見つめれば、きょとんとした瞳に尖らせた唇。

突き出た赤い唇から覗く黒いウインナーの頭に、真ん丸な瞳は純で。戸惑いながら、相手と同じように首を傾げれば、堪えきれずに笑い出した恋人が愛らしくて。
「ゾロ、写真、しないんか?」
もぐもぐとウインナーを食べるルフィに聞くところ、実家での"たこさんウインナー"は、自身の知る"たこを模したそれ"ではないらしく。
「こうやって、ウインナー咥えて、口をたこにして、写真をとるんだ!サボとエースが教えてくれたんだぞ!こうやって食べるとたこの味がするんだ!」
からかったのか、はたまた可愛い弟の反応に真実を告げられなくなってしまったのか、今は知る術がなくても、こんな愛おしい姿を見るきっかけを作ってくれた義兄に心で手を合わせて。
「写真とってくれないから、フツーのウインナーの味だ!」
なんて子供のように話す恋人に、摘んだウインナーを差し出せば、
「もう一回頼む。」
と席を立って、寝室から一眼レフのカメラを持ち出す。
「いーぞ!」
にかっと笑った白い歯が隠れれば、また油で光る唇が尖って、長い睫毛がふるりと揺れる。
カシャカシャとシャッターがおりる音に、レンズを覗く気にもなれず、まるで待てをさせられた犬のように咥えたウインナーを気にする様をじっと見つめる。そんな可愛い姿にごくりと喉が鳴れば、愛らしいその人に近付いて。まだかと言いたげな瞳を温かな手の平で覆えば、そっと唇を合わせて、真っ黒焦げのそれを小さな口からちゅっと奪った。
「あ!ずりィ!」
と近付く口元から逃げるフリをして、相手からのキスを受ければ、熱い体温に少し懐かしい夏の香りが鼻先を掠めた。




「これ、たこの味か?」
と尋ねれば、
「なら、もう一回?」
と尖る唇。










2017.05.23
黒焦げウインナーは蛸炭味?








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