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サンタの伝言


今日は素敵なクリスマス・イヴ。
恋人たちの輝く日。


ソファーでまったり過ごす午後が幸せで。録画していたお笑い番組にケラケラ笑う愛しい人につられて、頬が緩む。
電飾煌めく外の世界も素敵だけれど、こうしてふたりきりの時間を持てる度、一緒に暮らしてよかったと実感する。
コテンと肩に乗せられた小さな頭に、笑う度に赤みが強まる柔らかな頬。可愛くて仕方がなくて、食べてしまいたいほどで。

前触れなく鳴った電話の音に、
「おれが出る。」
と黒髪を撫でれば、不機嫌そうにぎゅうっと腕に抱きつく手に力が籠もって、
「なら、おれも行く。」
なんて。今日はクリスマス効果か、普段以上に甘えたらしい。
そんな行動や表情が愛おしくて堪まらなくて、なんでも許してしまいたくなる。

腰にしがみついたままのルフィをそのままに電話に出れば、
「もしもし、そちらにゾロ君はおるかね?」
訳あり気味に低く出された声は、聞き慣れたルフィの兄貴のもので。
「おれです。」
と、どうしたもんだと彼方にあわせて慎重に返せば、ほっとしたような息の後、低い声がいつものものに戻されて。
「ルフィにおれ達が電話したことは、黙っといてくれ。今日はお前とふたりで過ごすから、邪魔をするなと言われてる。おれ達も邪魔をする気はないんだが、折り入って相談が・・・」
そう小さく告げられる言葉を聞きながらも、腰に抱きつく可愛い人が誰とも知らぬ電話相手への嫉妬心から背中に鼻先を埋める仕草に心がきゅうっと締め付けられて。
ガサゴソという雑音と共に入れ替わったらしい柔らかな声が耳に響いた。
「ここからはおれが継ぐ。とにかく、この電話はルフィにはサンタさんからだと伝えてくれ。そして、そっちもサンタからの電話だと想定して返して欲しい。面倒だが、頼む。」
弟の扱いには慣れてると言いたげな甘い声の主は、淡々と言葉を紡ぐ。
「何度もいうことになるが、おれ達は何も弟の幸せな時間を邪魔したい訳じゃない。だから、できるだけ手短に話す。」

ぷくりと膨れる恋人に、
「サンタさんからの電話だから、少しだけ待ってくれ。」
と告げ、きらきら輝かした視線を受けながら聞いた話によれば、ルフィはサンタを未だに信じ続けているらしい。想像通りだといえばその通りだが、そのサンタの正体がふたりの兄貴ということらしい。
「今年はさすがにそっちの家には忍び込めないし、ゾロにサンタをやってもらおうって話に纏まって。もちろん、プレゼントは用意してる。夕方には、大量のお菓子と一緒に届くはずだ。」
静かに漏れる苦笑は柔らかで優しくて。
「バカな兄貴だと思うだろうが、あいつのこと、大切に思う気持ちはわかるだろ?」
ちらりと見下ろしたそこにある、子供みたいな幼い表情が可愛くて、
「ああ、もちろん。」
そう、笑って、

「ルフィは今年もいい子にしてたぞ。」
愛情深いサンタに告げた。


「サンタさん、おれにプレゼント、持ってくるって?」
とまん丸な瞳が更に大きくなって、興奮気味に声が高まる。
「早く寝たら、な。」
さらりと黒髪を撫でて白い額に口付ければ、くすくすと笑う恋しい唇。
「ゾロも一緒に寝ような!」
そう、髪を撫で返されて額をこつんと合わせれば、明日の朝、飛び跳ねて喜ぶ恋人の姿が見える気がして。


ふわりと舞い出した雪に、ピンポーンと明るいドアベルの音が響いて。

さあ、今からサンタの仕事がきっと始まる。








2016.12.24
枕元に届いたのは、大好きな人とお揃いのあったかパジャマ!







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